アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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<主張>「現金受領側全員不起訴――検察の『奇手』ではなく、安倍前首相の疑惑問わず、河井夫婦だけのトカゲの尻尾切り」

 東京地検特捜部は7月6日、河井克行・河井案里両元国会議員夫婦の公職選挙法違反(買収。克行被告は1審懲役3年、案里氏は懲役1年4月、執行猶予5年)で、カネを受け取った側計100人全員を不起訴処分にした。(冒頭写真=「毎日」「日経」7月7日記事)
この公職選挙法違反(被買収)に問われた100人の内訳は地方議員や首長ら44人、後援会関係者50人、選挙スタッフ6人。
最高額は亀井静香元代議士の元公設秘書の300万円。次いで元広島県会議長・奥原信也県議の200万円、前三原市長・天満祥典氏の150万円と続く。
100万円を超える金額は少なくないし、その身分も政治家や首長であることを思えば、一律に不起訴はおかしいと大手マスコミは疑問を呈している。
「日経」(下左写真。6月30日)など、これを検察の「奇手」と称し、河井夫婦を逮捕するために司法取引をしたのではないかと、しかしわが国の法では選挙違反は司法取引の対象外なので強く疑問を呈している。
誤解を恐れずにいえば、検察はそこまでして河井元法務大臣夫婦という大物を有罪に持ち込んだとして、密かに歓迎する向きもあるかも知れない。だが、それはまったくの誤解だ。
本紙では何度もいっているが、買収があった2019年の参院広島選挙区に河井案里氏が出馬したのは、同じ自民党の溝手顕正元国家公安委員長を落選させるためだったと思われる。安倍晋三前首相に対し溝手氏は厳しい発言をしていたことから安倍氏は以前から根に持ち、そこでその私怨のために案里氏を刺客に放った。
だが、広島県連幹部の多くな溝手氏支持。広島は溝手氏の属する岸田派の牙城でもある。そのため普通のやり方では溝手氏票を切り崩せない、そこでカネがいる(買収しかない)ということで、自民党本部から案里陣営には溝手氏の10倍の1億5000万円もの選挙資金が出、そして安倍氏の思惑通り溝手氏は落選した。(横右写真=「朝日」20年1月25日記事より)
だから、この買収事件の一番のワルは安倍氏で、河井夫婦はいわばそのための手ゴマだったに過ぎない。
本紙がそこまでいうのは、そうした経緯から、安倍事務所側にこの1億5000万円の一部が還流している(キックバック)疑惑まであり、具体的な金額まで出ていたからだ。今だからいうが、その金額をいっていたのは安倍事務所関係者だ。
しかも、日経報道に従うなら、検察の「奇手」(=司法取引)のお陰で、被買収容疑者のなかには、その安倍事務所側還流疑惑につき供述する者も複数いて調書も作成されているとの情報が出ていた。
そして、本紙では安倍氏が突如、首相を辞任したのは、この件が関係しているとまで報じていた
ところが、結局、検察は、安倍・菅連合の手ゴマの警視庁公安部の捜査によりスキャンダルを掴まれ、この安倍疑惑は捜査しないことで手打ちに
それでも、ディープスロート氏からは、検察の意地として、河井夫婦の公判で検事の方からこの安倍氏疑惑を匂わせる供述調書を提出、または案里氏が発言する可能性があると聞かされ、本紙は密かに期待していた。
だが、検察はもちろん1億5000万円の出資元である自民党本部に家宅捜索せず、検事、案里氏からも安倍氏疑惑の片鱗さえも出なかった。
結局、事件の本質は何ら明らかにされず、河井夫婦だけが有罪。
本紙からすれば、事が表面化した以上、せめて河井夫婦だけは有罪に持っていかなければ、安倍氏疑惑隠しとなおさら騒がれると「奇手」を使ったのではないか。
だが、奇手なんてものは、誤解を恐れずにいえば、巨悪に使ってこそ許されるもので、トカゲの尻尾切りに使うなんてことをすれば批判を受けるに決まっている。そして、そんなわけだから、今回の全員不起訴は「奇手」とは呼ばない。単なる、巨悪に忖度しての「めくらまし」に過ぎないのではないか。

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