報告が遅くなったが、妻・河井案里元参議院議員(有罪確定)が当選した2019年7月の参議院選挙を巡り、夫で元法相・河井克行被告が公職選挙法違反事件(買収、事前運動)に問われている公判が2月9日にあったが、検察側は河井陣営の元会計担当者の調書を読み上げた(冒頭写真=「中国新聞」記事)。
それは起訴内容の一部、陣営スタッフの3人への計約220万円の現金供与につき、「自民党本部からの入金が原資となった」旨の内容だった。
先の参議院選挙では、同じ広島選挙区から河井案里氏(当選)と溝手顕正元国家公安委員長(落選)と自民党候補2人が出馬。溝手氏は当時の安倍晋三首相に厳しい発言をしていたことから、安倍首相が溝手氏を嫌い、私怨から河井案里氏を“刺客”として立候補させたからこそ、安倍首相は二階俊博自民党幹事長と図り、自民党本部から選挙資金として溝手氏には相場の1500万円に対し、河井案里氏にはその10倍もの1億5000万円を出し(内、1億2000万円が我々国民の税金からの政党助成金)、そのカネが容疑の買収に使われたのではないかと見られていた。また、私怨で10倍もの自民党資金を使ったのが本当なら当初から溝手氏を落選させるため(自民党広島県連は溝手氏を支持しており、河井氏は苦戦が予想されていた)に買収ありきで安倍首相も買収の共犯として東京地検に告発状が出されてもいた。
ただし、状況的に自民党本部からの選挙資金が使われたと思われるものの、お札に個別の名前はついていないことからあくまで推測に過ぎないところ、「自民党本部からの入金が(買収)の原資になった」という具体的な証言がこの公判で初めて明らかになった。
というわけで、今回の証言が明らかになった意味は大きい。
菅義偉首相は確定しないことをいいことに、これまで「党勢拡大に資金が使われた」と説明し、問題ないとの認識を示していた。
本紙では、しかもこの自民党本部からの1・5億円の一部が安倍事務所側に還流したのではないかとの重大疑惑を報じている。
しかしながら、検察側は自民党政権側と結局、手打ちしたようで、河井夫婦の買収事件で自民党本部を家宅捜索せず、河井案里氏は広島県議4人に計160万円を渡した容疑で1月22日、東京地裁で懲役1年4月執行猶予5年の判決が。案里氏は期限の2月4日までに控訴せず同日、参議院議員を辞職。5日午前0時に有罪確定したのは大手マスコミ既報の通り。
一方、「桜を見る会」の疑惑は、安倍事務所を家宅捜索するまたとない機会だったのにやらず、秘書一人の政治資金規正法違反(不記載)での略式起訴だけで幕引きしたのもご存じの通り。
今回の公判で初めて1・5億円が買収原資になっていたとの証言が出たというのに、大手マスコミの報道が小さいのも、すでにほぼ一連の疑惑、事件は幕引きになってことに併せ、あいかわらずの忖度の結果か。