民族派団体「一水会」元代表で作家の鈴木邦男氏が1月11日、誤えん性肺炎のため東京都内の病院で死去していたのがわかった。享年79。
福島県出身。早稲田大学在学中、全共闘に対抗して右派系学生団体を創設。三島由紀夫の自決(1970年)、連合赤軍事件(71~72年)に衝撃を受け、産経新聞社を退社し72年に一水会を結成。旧来の右翼とは違い「反米」を掲げた同会は「新右翼」と呼ばれ、「朝まで生テレビ!」(テレ朝系)などの討論番組にも出演。リベラル系の言論人や政治家との交遊も広かった。
自称、本紙が遺志を継いでいる月刊誌『噂の真相』(休刊。皇室報道で右翼テロに会ったことも)の岡留安則編集長(故人)とも親しかった。
また、本紙・山岡が近年よく書かせてもらっている『月刊タイムス』で「三島由紀夫と野村秋介の軌跡」を150回近く連載。おもしろくいつも読んでいたが、2019年半ばに突如、連載中止になり、編集長の香村啓文氏に聞いたところ体調不良のためとのことで危惧していた。
本紙・山岡の自宅放火事件(05年7月)を受け、『創』(創出版)の篠田博之編集長が励ます会を催してくれた際、同じく自宅放火(03年3月)されたこともある鈴木氏も駆けつけてくれ挨拶してくれた。その晩、どういう経緯でか失念したが、2人だけで新宿歌舞伎町の中国クラブで痛飲。その手の店は初めてということで、中国人女性にいろいろ中国のことにつき質問するかと思ったら、女性の手を握り質問することもなくにこにこしていたのを意外に感じたことを覚えている。
僭越ながら、まったく偉そうぶったところがなく、左右隔たりなく話を聞き、昨今のヘイト主義者など爪の垢を煎じて飲んでもらいたいと思うほど心広く、真に優しい知識人だった。合掌。