昨日3月14日午後4時、参議院会館講堂で、「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」が開かれた。呼びかけたのは有田芳生議員(民主党)をはじめ徳永エリ議員(同)、田城郁議員(同)、平山誠議員(みどり)ら11人の国会議員。「在特会」(在日特権を許さない市民の会)らに抗議する集会が議員会館で開かれるのは初めて。
「在特会」といえば、本紙では同会会長が、小沢一郎代議士の強制起訴に通じる告発を行った人物だとして取り上げたことがある。
その在特会関係者による集会妨害を警戒し、ピリピリしたムードが漂う中、会場には150人ほどの参加者がつめかけた。
まず呼びかけ人の有田氏(写真)が集会の意図を説明する。「北朝鮮による拉致問題委員会に出席している。『朝鮮人を東京湾に沈めろ』と叫ぶ在特会を見た拉致被害者の家族が、『ああいうのは困る。何とかならないか』と語った」「在特会なんて放っておけばなくなる、と言う人が多いが、もう限度を超えている。今後、法務委員会でも取り上げていく」。
その在特会とは実際、どんな団体なのか。スクリーンに映像が映し出された。それは、京都朝鮮第一初級学校(日本の小学校に相当)に日の丸を押し立てて、「スパイの子ども」「朝鮮人は帰れ」と叫ぶ男たちの姿だった(左写真)。
この間、在特会を追い続けたジャーナリスト・安田浩一氏(『ネットと愛国』著者)が説明する。「在特会は07年に500人で設立され、現在公称1万2000人。コリアンが政治家とメディアを支配していると妄想し、コリアンへの敵意をドライブにして行動をエスカレートさせています」「在特会を辞めた人に、どうしてこんなことをしたのか聞いてみた。『今まで味わったことのない高揚感があった』と。つまり集団の力で『朝鮮人を殺せ』と叫んで充実感を得ている。これは、ネット上で見られる『炎上』と似ています。深刻なのは、かれらは特殊な人々ではなく、ふつうの生活者であること。黒幕のいない、草の根の運動であることです」。
龍谷大学教授の金尚均氏。「在特会が街頭で『朝鮮人を殺せ』と叫んでも、今の刑法では規制できない。名誉毀損罪や侮辱罪は、個人に適用されるからです。ドイツ刑法には民衆扇動罪があり、例えばユダヤ人や難民に対しヘイトスピーチ(憎悪発言)をすれば処罰されます。日本でもそのような法規制を議論する必要があるのではないでしょうか」(上写真は、在特会がおこなった東京・新大久保周辺のデモ)。
弁護士の上瀧浩子氏。「朝鮮学校事件の後、学校に通う子どもはおびえ、保護者は『子どもたちを守れなかった』と思いつめています。在特会のヘイトスピーチは、抵抗すればもっと傷つく、という沈黙効果をもたらしています」「『殺せ、死ね』と叫ぶ相手に、『言論には言論で対抗を』と言っても、成立しないのでは」。
続いて、それまでとは違った立場からの発言があった。民族派団体「一水会」だ。最高顧問の鈴木邦男氏は語る。「朝鮮学校の門前で、在特会が掲げていた日の丸は泣いていた。愛国者を自称するものにろくな者はいない」「公安警察はわざと在特会を野放しにしている。在特会がゲバルトでやるというなら、こっちもゲバルトでやるまでだ。警察に頼っていては世の中は変わらない。一人ひとりが勇気を持って立ち上がろう」。さらに同会代表の木村三浩氏は「日本を愛し、右翼思想で行動する者の一人として、在特会に怒りを感じる。彼らは右翼ではなく、レイシスト(人種・民族差別主義者)ですらない。自分が承認されたいために騒いでいるだけ。やっていることは弱いものイジメだ」。
数人の発言の後、「私たちはあらゆる排外主義と人種侮蔑行為に抗議する」との決議文が読み上げられた。最後に有田氏は「これで終わりではありません。次回もまた参集してください」と締めくくった