アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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<主張>民事・刑事改悪で激化する労働運動潰し――ストした生コン支部幹部に威力業務妨害で有罪判決

 組合員と共謀しセメントの輸送業務を妨害したなどとして威力業務妨害罪などに問われた「全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部」(関西生コン。大阪市)の執行委員長・武建一被告(79)に対する一審判決が7月14日にあり、大阪地裁は懲役3年、執行猶予5年(求刑は懲役8年)とした。弁護側は即日控訴
容疑のなかには、生コン製造販売会社社長を脅して1000万円を受け取ったとする恐喝容疑も含まれていたが、「金銭を要求したとは認められない」などとして無罪とした。
求刑8年といえば、まず間違いなく実刑判決が出るものだ。
しかも、武被告は憲法で保障されている労働者の権利(団結権、団体交渉権、団体行動権)の下、組合活動をしていて罪に問われているのだ。そこになぜ恐喝容疑まで?
こうした事実から見ても、この事件は「国策捜査」で、それ故、何が何でも運動を潰そうとそのリーダーの武被告を狙ったが、余りに強引過ぎてさすがに裁判所も追認できなかったということではないのか?
武被告は「生コン界のドン」などともいわれ、ネット検索すると組合員メンバーと共に暴力団と見間違うような強面のイメージがある。
だが、その実態はといえば、まさに最底辺の「たこ部屋労働」状態だった生コン業界にあって、組合活動を通じて従来の安値乱売を是正させ、近年では、阪神淡路大震災で橋脚やビル等が倒壊し露わになった一部悪質業者による「シャブコン」(水を大量にセメントに加えコストを安くする。ただし価格が安いという背景も)是正にも取り組んでいる。
 武被告の『大資本はなぜ私たちを恐れるのか』(旬報社。20年12月発売)という著書によれば、生コンの組合は産業別労働組合(1企業毎の組合ではない)で、70年代から運動を本格化させ、94年には協同組合として正式発足し、生コン価格のアップ、完全週休2日制など大きな成果を上げた。
生コンは建築資材の一つである“半製品”で、中小零細企業ばかり。ゼネコンとセメントメーカーという大企業の間で安値で買い叩かれて来た。そこに生コン業界は協同組合化で対等に交渉を言い出したことを恐れたと見る。しかも、武被告らの運動潰しをカネで雇われ暴力で行うレイシスト集団は何らお咎めなしと。
本紙では今年2月、「学研ホールディングス」と、かつての孫請け会社社員が結成した組合との件を報じたが、19年5月、民事執行法が改正され、労働運動潰しに悪用されている。
また、連帯労組「大道測量」のケースでは元社長自宅から半径1㎞以内の抗議禁止(これでは抗議できない)、大学生協を潰した明治大学への抗議では裁判所が抗議する組合員のマイクや組合旗を違法として取り上げるなど、従来の労働運動を否定する判例も次々と出て来ている。
セメント業界といえば、「太平洋セメント」(5233。東証1部。東京都千代田区。連結売上高約8639億円。21年3月期)、「住友大阪セメント」(5232。東証1部。東京都千代田区。同2392億円)、麻生太郎副総理の実家の「麻生」(福岡県飯塚市。同2277億円)がトップ3。
だが、こうした背景を大手マスコミはまったく報じず、ただ有罪との判決を流すだけ。前出・武被告著書によれば、某民放局が武被告の関西生コンのドキュメンタリー番組をやろうとして取材もほぼ終えた段階で放送中止になったこともあるという。


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