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大手給湯器交換業者の闇――事業拡張で生き残り模索も厳しいビジネス構造(第4回)

本紙では昨年12月から、ネット検索で「即日対応可」を謳う給湯器交換業者の現状につき連載している。
すでに3回報じており、第1回は近年この給湯器交換の専門業者が大手量販店などのシェアを奪って来た背景。第2回では、しかし交換した古い給湯器の産廃処分問題を抱えていること。第3回では、早くもこの業界は限界を迎えつつある状況を、それぞれ解説して来た。
4回目の今回は、これら1~3回のなかで出て来た個別の問題を構造的に捉え、限界を打破すべく事業拡張で生き残りを模索するところもあるが、すでにこのビジネスモデル構造自体が崩壊しつつあるなかでは、そんなことで生き残るのは極めて厳しいのが現実であることを解説する。

■国策ビジネスの前提条件

この業界が、「エコキュート」などのエコ高効率給湯器に国などから補助金(2023年から本格化)が出るなか、一挙に伸びて来たことは既報の通りだが、それだけに法令遵守は絶対条件といえる。
対象となる法制度は建設業法、下請法、独占禁止法、産業廃棄物処理法など。これらを違反したビジネスは成立し得ない。
これに対し、現実はどうなのか?
給湯器交換専門業者の多くは集客(広告)、受注(本部)、施工(外部委託業者)という分業構造で成り立っている。この構造自体は問題ではない。
しかし、外部委託の施工業者への発注価格の一方的な変更、工事案件の振替、支払い条件の変更、取引の停止といった行為が重なれば、単なる取引では済まされない。
しかも、外部委託の施工業者は、発注を一手に握る給湯器交換専門業者の売上にほとんど依存しており、代替手段がないという状況では猶更で、優越的地位の濫用と評価され得る。
そこに持って来て、この連載第2回で給湯器交換では必ず発生する撤去品の問題を見たように、この古い給湯器は原則として産業廃棄物であり、排出事業者責任、許可制度、マニフェスト管理に基づき処理されなければならない。
そんななか、ある大手業者は2025年11月、法人登記簿の目的欄に「産業廃棄物関連コンサルタント業務」を追加するなど、この際、新たな事業にしようとしているのかと思えるような動きも見られる。
本来、このような業務は、産業廃棄物に関する法令順守体制の整備や、適正処理に向けた助言・指導を行うことを目的とするものである。
しかし、その前提として問われるべきは、自社における実務運用の適正性である。
現場で出た既存の給湯器について、業者側が社員や下請事業者に指示を出し、都道府県を跨いで自社の倉庫に集積させているといった“脱法”行為が指摘されている。
さらに、当該顧客から既存給湯器の撤去処分費を受領しているにも拘わらず、自社の倉庫に集積させた給湯器を金属資源としてスクラップ業者に引き取らせ現金化する行為も、実は長年に渡り横行していることも指摘されている。また、自社の一部社員が、スクラップで得た金を着服する事案も。
顧客から処分費を受け取って回収したのに現金化する場合、中古品なので古物商の許可を得る必要性も出て来る。
さらに、産業廃棄物処理に関する知見を有する人材を経営に加えること自体は結構だが、実務レベルでの運用改善に繋がっているのかというと疑問は多い。
こうした実態では、国策ビジネス(補助金)の前提条件である法令順守などとても望めないではないか。

■「どこで買っても同じ」というこのビジネスの現実

給湯器ビジネスの構造は本来きわめて単純だ。
メーカーが製品を作り、商社が流通させ、施工業者が現場で設置する。
極端に言えば、どの事業者に依頼しても“モノ”は同じである。
差が出るのは、現場対応の質、説明の誠実さ、アフター対応、法令遵守、そして信頼できるかどうか。それだけだ。
ところが、昨今、この業界では顧客を意図的に錯乱させる「歪んだモデル」が入り込んでいる。
あるタイプの業者は大量の広告費で検索順位の買い占め、テレビCMを流し、「業界最大級」の外観を作っている。さらに悪質なのは、給湯器業界と利害関係を持つ者が、第三者を装って「比較サイト」や「ランキングサイト」を運営し自社に誘導する仕組みを構築している。利用者はそれを「中立的評価」だと誤認する。実態は自作自演。これはマーケティングではない。
そんなことまでして売上を伸ばし、上場を目指していた業者も。
ところが、上場できず、その後も拡大した人員を削減できず、倉庫も在庫を抱えたまま。中身の伴わない「大企業ごっこ」が続き、大企業病が蔓延している。
そして、これが後のすべての歪みの起点になる。
都心の一等地に本社を構え、華やかなオフィスと広告露出で「一流企業」の外観を演出など、本来、給湯器という単一商材のビジネスモデルには必要ない。給湯器の販売と施工手配という、極めて単純な事業構造なのだから。スリム化できないのは、経営そのものの問題である。

■現場産業に共通する「拡大後の分断構造」

現場を伴うビジネスには共通した崩れ方がある。
創業期には商品を熟知した人物が現場に立ち、仕入れも施工も販売も身体感覚で理解している。だが事業が拡大すると共に分業化される。
経営は数字を見る者へ。営業は電話と画面を見る者へ。現場は作業担当へ。
こうして商品理解と意思決定が切り離される。
給湯器のように設置環境、補助金要件、施工難易度、廃棄処理、アフター対応が絡む商材は机上管理では成立しない。
それにも拘わらず、現場を知らない管理層が価格とスピードだけで判断を始めた瞬間、制度との摩擦は必然となる。
こうして、制度リスクが顕在化した局面で批判を恐れトップは前に出なくなる。
本来必要なのは現場再構築、業務是正、取引条件の見直しだ。
しかし現実には判断は先送りされ、責任は分散され、帳尻は現場と営業に押し付けられる。組織はこうして静かに壊れていく。
三者は分断され、互いに責任を押し付け合い、最後は「数字」でごまかす。
その結果、制度との摩擦が蓄積され、現場は疲弊し、人が辞める。
これは個人の能力不足ではない。専門性の不在という構造問題である。

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