ウルフパック戦術――複数の株主が協力関係にあることを隠し、時期を見て一斉に対象会社に攻勢を仕掛けて、株価向上策や株主還元、さらには経営権を奪取しようとする投資戦術を意味する。
実際は協力関係にあるのだから、共同保有で「大量保有報告書」の対象になるはずだが、表向きは無関係を装っているので、その届け出はせず、各株主は5%以下で保有。狙われた会社からいえば、突如、大量の株を買い占められ、気づいた時は対策しようがないというケースも。別名、群狼(Wolf Pack)戦術とも言われる。
「中国仕手集団」がこの戦法をよく取り入れているようで、近年、狙われた上場銘柄だと「東京機械製作所」、「北日本紡績」、「三ッ星」、さらに「ナガホリ」もそうとの指摘もある。
そんななか、「オウケイウェイヴ」(3808。名証ネクスト。東京都渋谷区)の名前も上がっている。ただし、こちらを狙っているのは中国系仕手筋ではないようだが。
オウケイウェイヴは2020年6月期から営業損失が続いており、追い打ちをかけるように、2022年4月に「Raging Bull」(合同)との取引で約40億円の貸倒引当金を計上し、同年6月期は51億2000万円もの純損失を出した。その結果、2021年6月末に56億円だった純資産額は22年6月末には8億5900万円まで縮小。預金残高は91億5900万円から4億6000万円まで激減している。
そんな惨状のなか、22年8月開催の臨時主総会で、前経営陣を一掃し、新たに社長に就いたのが杉浦元氏(冒頭写真)。
本業での立て直しを進めていたが、23年6月期に営業黒字化することができず10億6600万円の純損失を計上。同年6月末に9800万円の債務超過に陥った。
そこで財務体質の改善を図るため、今年5月30日の取締役会で4億4000万円の有利子負債を株式に振り替えるDES(デット・エクイティ・スワップ)を決議した。有利発行(1株33円)だったため、9月28日開催の定時株主総会で特別決議で諮る必要があり、基準日は6月30日に設定された。
ところが、これに反発したのが、当時からすでに11・58%の株式を保有し筆頭株主だった公益財団法人「こどもの未来創造基金」(代表理事・佐藤悠大)だった。
オウケイウェイヴが9月14日にIRした「委任状による議決権行使のお願い」などによれば、こどもの未来創造基金だけでなく、同基金と共同保有者の「ext」(2・22%。代表取締役・丸山祥)、その他の反対株主7名(計9・25%)、それにオウケイ側と係争中の元役員(計6・09%)を含む総計約30%が、7月に入りメールにてDESに反対するとの意見をメールして来たという。
これに対し、昨年の定時株主総会の議決権行使比率(訳36・5%)を考えると、総会出席株主の3分の2以上の賛成は得られないとオウケイウェイヴ側は判断し、8月28日、5月30日決議した1回目のDESは中止。同日、代わりに、同じくDESとはいえ、発行価格は時価に近い1株44円、金額も2億円弱と中止した1回目DESの金額の半分以下の新株発行を決議した。こちらは行使価格は時価に近いし、株の稀薄化も半分以下で、特別決議はいらない。