業績不振で株価低迷している企業にとって、PCの仮想空間でのサービス=「メタバース」を始めると謳うことは、そのサービス内容の質が高ければ当然だが、そうでなくても一時的に株価を引き上げる材料としては今、大いに注目されている。
「アンジェス」(4563。マザーズ。大阪府茨木市)や「テラ」(2191。JQ。東京都新宿区)などコロナ絡みの治験開始が材料の場合、その後の治験結果を報告しないわけにはいかず、うまくいかなかったら大ダメージを被るリスクは高い。まして、治験が嘘だったなど論外。その点、メタバースには治験結果のような厳密さは要求されないのでリスクは低いし、同じネタでその後のサービス向上関連などで何度もIRすることも可能だ。
カジュアル衣料製造販売の「ANAP」(3189。JQ。東京都港区)は12月9日、このメタバース領域で自社のファッションアイテムなどを販売して行くプラットフォームの提供を今後開始するとIRした。
あくまで今後やるといっているに過ぎず、プラットフォームが完成したわけでもなければ、具体的な完成時期も明らかにしていない。
しかし、ANAPの株はIR翌日の10日はストップ高。今週に入っても上がり続け、わずか3営業日で2倍という急騰ぶりだ(冒頭写真)。
筆者はこのANAPのIR内容がいい加減などというつもりはまったくない。ただ、同社社長が株好きで自社株を引き上げたいのではないかという見方が兜町では専らだということだけ言っておきたい。
同じ衣料関連の「パレモ・ホールディングス」(2778。東証2部。名古屋市)も12月9日にストップ高した。ただし、こちらはメタバースとは関係ない。
こちらは旧ユニー系で、筆頭株主が今年7月末、それまで筆頭株主だった投資ファンドの株式を取得するかたちで「西松屋チェーン」(7545。東証1部。兵庫県姫路市)に変わった(17・32%)が、その西松屋が追加出資するとの情報を某煽り屋が囃し立てたため。したがって、株価は翌日には下落した。