
先月、渋谷シネマヴェーラという名画座で、安藤昇特集をやっていたので、『実録・安藤組』(1973年。東映。佐藤純彌監督)を53年ぶりに観た。
安藤昇を初めて映画館で観たのは1972年(浪人時代)に新宿昭和館(やくざ映画中心の3本立ての名画座で何十回も通った)で上映された『現代やくざ・人斬り与太』(深作欣二監督)。ドスが効いてて、眼光鋭く魅入られてしまった。
当時、ベストセラーだった自叙伝『やくざと抗争』も買って読んだっけ。
その映画化が『実録・安藤組』だ。
戦後闇市時代の渋谷で、学生上がりの愚連隊グループ(学ラン姿なのだ!)を率いてのし上がってゆく姿がバイオレンスたっぷりに描かれているのだが、既成のやくざ組織なにするものぞと渋谷を制圧してゆく様は今観ても圧倒されてしまう。
さて、今回再見して思ったのは当時の渋谷の描写である。
映画は学生愚連隊から安藤組(映画では「矢頭組」)結成の頃だから、昭和20年代の半ばあたりか。セットは闇市の街並みだが、当時の渋谷も混ざるところがアバウトで面白い。緑の山手線は走っているし(当時ならチョコレート色の昔の車両だが)、東横デパートの新館(『モスラ』で壊された)が映るしで、今ならCG処理でいくらでも加工できるのに、70年代の東映では「これでいいのだ」でOKだったと。ちなみに、銀座を闊歩するシーンもあって、映画館でカトリーヌ・ドヌーヴの『昼顔』が上映されている。このコントラストがすごいよね。
もう一つ貴重な発見は渋谷川(横写真)だ。渋谷から恵比寿にかけての線路沿いの風物詩なんだけど、荒涼とした感じで、ロケ地にもよく選ばれている。映画では、安藤昇が渋谷川を渡って(水が少ない)敵のアジトに乗り込むのだが、実はこちとら小学6年(1965年)から3年間、恵比寿に住んでいたことがあり、家のすぐ裏手が渋谷川だったのだ。なので、新旧混ぜこぜの『実録・安藤組』は観ていて不思議な気持ちになってくる。



