アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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<書籍紹介>『精神医療ビジネスの闇 発達障害バブル、製薬マネー、人権侵害の歴史』(米田倫康著。北新宿出版)

 日本の精神医療の負の側面を追ってきた、米田倫康氏の最新刊を紹介したい。
まずは「第1章 作られた精神疾患ブーム」で、“うつ病キャンペーン”や巧妙なイメージ戦略によって、精神疾患が意図的に作られ、その「治療」が煽られてきた現実を、具体的なデータと「チェックリスト」の検証で浮き彫りにする。前著『発達障害バブルの真相』からさらに最新データが積み重ねられている。
続く第2章では、「精神病床数が世界一多い」日本の精神医療が示すように、精神障害者を施設に隔離・収容することによる金儲け、ビジネスの実態が暴かれる。診療報酬の不正請求、職員水増しなど事件化したものだけではない。日本の精神医療の構造的問題(患者の命よりも経営重視)が浮き彫りになる。
「精神科医は患者を『治す』つもりがない」という衝撃的なフレーズから始まる第3章では、症状を大量投薬で抑え込む“治療”が、処方薬への過度な依存から、果ては自殺まで引き起こす要因になっており、その背景には精神科医と製薬会社の癒着があることが暴かれる。
このような精神医療の実態を知ると、読者、とりわけ精神疾患に苦しむ本人や家族は不安や戸惑いを覚えるかもしれない。
本書の最後に著者は、昨年10月、WHO(世界保健機関)と国連高等弁務官事務所が共同作成したガイダンス「メンタルヘルス、人権、法律」を紹介している(第5章 どのように精神医療ビジネスに立ち向かうべきか)。
このガイダンスは精神医療の生物医学的モデル(精神的問題は神経生物学的要因によって引き起こされるという概念)から脱却し、人権侵害を無くすアプローチをとることを提唱している。「実践レベルでは99%以上が生物医学的モデルに基づく」日本の精神医療が、このガイダンスに沿って法整備を進めれば、精神医療ビジネスはおのずと存続できなくなるだろう、と著者は締めくくっている。
本紙ではこれまで米田氏の著作を4冊紹介してきたが、本書は「精神医療を批判的に検証してきた立場からの集大成」といえる。
「精神医療の権威や、彼らの主張を無批判に採用した政策、無責任に拡散する報道らが作り上げてきた『常識』を疑うことは非常に困難です。しかし、本書が提供する知識や視点があれば、そのような常識の裏側に隠された欺瞞に気付くことができるでしょう」(「はじめに」より)。(北新宿出版。本体価格2000円。240頁)。

<書籍紹介>『発達障害バブルの真相』(萬書房)2019年3月22日掲載

<書籍紹介>『もう1回やり直したい――精神科医に心身を支配され自死した女性の叫び』(萬書房)2019年12月20日掲載

<書籍紹介>『ブラック精神医療 「こころのケア」の不都合な真実』 (扶桑社新書)2021年11月5日掲載

<書籍紹介>『児童精神科医は子どもの味方か』(五月書房新社)2023年1月27日掲載

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