アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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<書籍紹介>『児童精神科医は子どもの味方か』(米田倫康著。五月書房新社)

「市民の人権擁護の会」日本支部の代表世話役で、精神医療現場で起きている人権侵害の問題に取り組んでいる米田倫康氏の著書については本紙でもこれまで3冊、紹介してきた。精神医学がマーケティング化し、製薬企業や政府をバックにつけて需要を喚起(うつ病キャンペーン)したことの問題点を訴えて来た著者が、前著『発達障害バブルの真相』に続き、児童精神科医の問題性を鋭く追及している。
昨今、子どもの「10人に1人」どころか「5人に1人」が発達障害だと報道されると、子どもを持つ親が不安になるのは当然だ。追い打ちをかけるように、コロナ後の「児童生徒の自殺が急増」「理由はうつ病などの悩み」と報道され、親としては不安になり児童精神科医に相談したくもなる。
だが著者は、発達障害・うつ病への過剰診断や、精神薬投薬がむしろ逆に子どもの状態を悪化させる危険性がある、と警鐘をならす。前著でも触れられたが、大人だけでなく子どもも、精神疾患の「早期発見・早期受診・早期治療」が鉄則とされ、その根拠に子どもでも精神疾患が急増しているとセンセーショナルに報道されてきた。
しかし本当に子どもの精神疾患は急増しているのか? 本書では2007年、「子どものうつ病の第一人者」傳田健三医師が小4から中1まで計738人を対象に診断した結果、「うつ病と躁うつ病の有病率が計4・2%、中1に限ると10・7%」とされ、大きく報道されたが、米田氏は調査方法にトリックがあり、使用されるチェックリストにも問題が多いと指摘する(第2章 児童精神医学の知られざる歴史)。
記憶に新しい旭川女子中学生いじめ凍死事件(21年2月)の被害者である少女は、小4で自閉スペクトラム症と診断された。いじめにより川に飛び込んだ少女は警察に保護された後、精神病院に。その際、かけつけた少女の母の証言によれば、少女はベッドもない独房のような部屋で、服や下着も着させてもらえず、泣いて訴えても聞き入れてくれない状態だったという。「発達障害の早期診断や早期治療はいじめを防ぎ、精神科の専門病棟は生きづらさに苦しむ子の避難所や休息地になり、早期の精神科治療は自殺を防ぐというイメージはありますが、少なくとも彼女の場合、結果は全てその真逆でした」と著者は指摘する(第3章 作られたイメージと本当の姿)。
そもそも「子どもが泣き叫んだりかんしゃくを起こしたり不機嫌になったりするのは普通のことです。この頻度や程度をどう解釈するかは結局主観になります。なんでもかんでもASDの症状だと疑うような児童精神科医にかかれば、子どもらしい普通の行動までも『小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性』と解釈され、安易に投薬の対象とされてしまう」(同)と言われるように、製薬会社のキャンペーンと、一部の児童精神科医の誤った判断で、本来治療の必要のない子どもが投薬漬けになってしまうのは恐ろしいことだ。一読を勧めたい(本体価格2000円。307頁)。

<書籍紹介>『もう1回やり直したい――精神科医に心身を支配され自死した女性の叫び』(米田倫康著。萬書房)
<書籍紹介>『発達障害バブルの真相』(米田倫康著。萬書房)
<書籍紹介>『ブラック精神医療 「こころのケア」の不都合な真実』 (扶桑社新書)

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