大阪はJR天王寺駅から南に約1・5㎞という好立地の1100坪以上の不動産が、現在、競売にかけられている。(冒頭写真=「朝日」大阪版。10月14日夕刊記事)
入札期間にすでに入っており、10月18日から24日まで。28日に開札される予定だ。売却基準価格は約3億3000万円。
だが、常識的にはこの入札に参加する者はいないと思われる。
というのは、この土地は、「天下茶屋の聖天さん」と親しまれ、1000年以上の歴史を誇る大阪市阿倍野区のお寺「正圓寺」の敷地の約3分の1で、そこに建つ本堂、礼拝所、住職が暮す庫裏なども対象だ。
そして、現在もそこに住職は住み、檀家や信者も来て参拝している。
にも拘わらず、競売落札し、お寺を潰してマンションでも建てようものなら、「施主・檀家・信者等の利害関係人の反発も予想されることから、利用は困難といわざるを得ない」といった大阪地裁執行官の意見が、競売に際しての「現地調査報告書」に載っているほどだからだ。(横写真=赤線囲みはお寺所有地。青色囲みが競売対象地)
では、なぜこんな由緒あるお寺、それも潰れたわけでもないのに、それもその一部が競売対象になっているのか?
それは、ビル管理など行う「ユニテックス」(大阪市浪速区)という会社が、この競売対象地を所有する「ミングルセンター」(大阪市中央区)に対し1億5000万円の債権があるとして競売申し立てを行ったからだ。
本紙では20年3月から21年6月にかけ6回、この正圓寺の乗っ取り事件につき報じていた。その際、“乗っ取り”していると思われる側につき実名報道していたところ名誉棄損容疑でお寺の住職らと共に刑事告訴された。その際はまだ十分に裏づけが取れてなかったので実名をイニシャルに、ユニテックスの中務稔也代表取締役会長の顔写真は削除した。だが、それから約1年。疑惑は濃厚になって来たので、今回からは実名報道することにした。この過去6回の記事を見てもらえれば、事件の概要がわかっていただけると思う。