武漢でコロナ禍現場状況発信ジャーナリスト――行方不明から約６００日ぶりに公に生存確認

　新型コロナウイルスの発信源とされる中国武漢市に、都市封鎖とほぼ同時の20年１月下旬に単身乗り込み、死んだようになった街や、遺体が並ぶ病院の様子などをユーチューブ等ＳＮＳで世界に発信した中国人ジャーナリスト・陳秋実氏（冒頭写真左人物。36）が行方不明になったのは２月６日のことだった。
以来、実に約１年８カ月。
中国当局に連行されていたと見られ、安否が気遣われていたが、９月30日、陳氏は親友の格闘家・徐暁東氏（同右人物）のユーチューブに登場し元気な姿を見せた。行方不明後、初めて公の場に登場したことになる。
ただし、当然ながら陳氏は“危険人物”として中国当局の監視下に置かれているはずで、10月１日にも２人はユーチューブに出たが、この間、当局との間でどんなことがあったのかについては一切語っていない。ただ、徐氏が陳氏失踪後にユーチューブで発信していた情報などによれば、当局の拘束から約１年前に解放後、青島市で両親と暮らしていた模様だ。
関係者によれば、陳氏は黒龍江省出身。大学卒業後、北京でお笑いタレントをしていたがそれでは食えず、一念発起し弁護士資格を取得。北京市内の弁護士事務所に務めていた。人権派弁護士で、真相を探り伝えるべく単身、北京から武漢に乗り込んだ。
失踪直前にはユーチェ―ブで、涙ながらに「死ぬことなど恐くない。共産党を恐れてなるものか！」と叫んでいた。
「２人は親友で、徐さんは陳氏の失踪後、自身のユーチューブなどで陳氏の母親が当局に息子の安否を聞きに行く様子など伝えていた。徐さんは世界的な格闘家で、かつ、当局批判もすることで知られている。多くのファンがいて、その徐さんが陳氏の安否につきこの間世界に発信していたことが釈放に繋がった可能性がある。同じように未だ行方不明の方はたくさんいますからね。
　陳氏は弁護士ながら、当然、今後は誰もが当局の介入を恐れて雇ってくれない。今回のユーチューブでは、今後、陳氏は徐さんの元で格闘家になることを宣言していたが、徐さんが今後の陳氏の生活の面倒を見てあげるということでしょう。陳氏のコロナ現場発信はいうまでもないですが、徐さんの援助もとてもできることではありませんよ」
この関係者によれば、中国ではユーチューブの発信自体違法。特別な機械を使い発信しており、陳氏はむろん徐氏も当局監視下にあり、今回ユーチューブで陳氏の生存を公にしたこと自体、ある意味、命がけのこととも。
ただ、繰り返すが、徐氏は格闘家として世界的に有名で、かつＳＮＳで発信することで世界の目があるからこそ当局も生存の事実を公にしたことだけでは手を出せないと見る。
多くの中国国民は今回生存を公にしたことにつき「いいね」マークを押したいものの、当局の摘発を恐れできない。マークを押すのは自分も含め海外の仲間だけだと、今回、本紙に情報提供してくれた関係者は嘆いていた。
陳氏のまさに命を懸けた報道はジャーナリストの鏡。本紙も含め、そんなこと出来る者が、忖度報道が跋扈するわが国報道人のなかでどれだけいるだろうか？　一人もいないのでは!?