アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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厚労省、「べクルリ―」(レムデシビル)を新型コロナ治療薬初承認の不可解――「アビガン」よりなぜ先!?

 大手マスコミ既報のように、わが国厚労省は5月7日、世界第2位の大手バイオ製薬会社「ギリアド・サイエンシズ」(米ナスダック上場。米カリフォルニア州フォスター市)の抗ウイルス薬「ベクルリー」(一般名はレムデシビル)を新型コロナウイルスの治療薬として承認した。
一般に申請から承認まで1年かかるところ、わずか3日という異例の速さで、日本は特例承認した。
わが国に先立つ6日前、米国でもすでにこのベルクリー、やはり新型コロナ治療薬として特例で米食品医薬品局(FDA)が承認。米国でも新型コロナ治療薬としては初の承認だ。
こう聞けば、このべクルリ―、さぞ有望な薬(静脈への点滴注射薬)だと思うことだろう。
ところが、その有効性はひじょうに心もとない。
このべクルリ―、そもそもエボラ出血熱の治療薬として開発されたが、まだその本来の目的でも米国はむろん、他の国でも医薬品の承認を得ていない。臨床試験で高い効果が得られないためだ。
それでも新型コロナ用に流用して高い効果が得られれば、それはそれで問題ない。だが、大手マスコミ既報のように、米国立衛生研究所での新型コロナの病状が進んだ1063人を対象にした治験によれば、回復までの日数が投与しなかった人の15日に対し、投与した人は11日と4日程度短縮したに過ぎない。しかも死亡率では統計的に意味のある差はなかった。また、新型コロナウイルスの発生源と見られる中国のチームが約240人を対象とした治験では有効性は確認できなかったという。
これに対し、そもそもは新型インフルエンザ薬として開発、医薬品として承認されている「アビガン」(錠剤。一般名はファビピラビル)の新型コロナウイルスに対する有効性はどうか?
中国の研究では、アビガンを投与したら4日でウイルスが消失、肺炎の重症化も阻止しているという。
去る医療関係者もこう証言する。
「中国・武漢では1000人単位の患者に投与され、PCR検査で陽性と判明して5日内なら99%、12日目でも73%に効いたと聞いています」。
一方、すでにわが国では3月31日から治験が始まっており、その346人の結果を見ても、投与から14日後には軽症と中等以上の患者の実に9割、人工呼吸器が必要な重症患者でも約6割が改善したという。
 この治験者のなかには脚本家・宮藤官九郎氏、タレント・石田純一氏もいて、お陰で助かったと公言している。こうしたことから、同じく感染し、こちらは亡くなったコメディアンの志村けん氏、女優の岡江久美子来氏らもアビガンを投与されていたら助かったのでがないかとの声も聞かれるほど。そして、あのノーベル賞授与の京大iPS細胞研究所の山中伸弥教授も特例承認を求めているほどだ。
このように、その効果は誰が見てもアビガンの方が期待できる。
しかも、このアビガンは「富士フィルムホールディングス」(3104。東証1部。東京都中央区)の子会社「富士フィルム富山化学」(「富山化学工業」名で東証1部に上場していたが、08年にTOBで傘下に)が開発・製造しており、在庫もある。
これに対し、べクルリ―の方はわが国に在庫はなく、いつ製品が入って来るか未定という。
安倍首相と富士フィルムの古森重隆会長がお友だちだとか、同社が政治銘柄化しているとの一部報道もあるが、有効とされる以上、事は人命に関わることなのだから、特例でさっさと承認すればいいではないか。なぜ、効果の怪しい外資企業の方が先なのか!?
これに対しては、2つの反論が予想される。
①アビガンの妊婦への投与は、生まれて来る子の奇形や致死といった重要な副作用がある。②在庫不足という主張だ。

そこで、まず①だが、これに関しては、一日も早い承認を主張するある内科医はこう述べる。(横写真の図参照のこと)
「医薬品に副作用は付き物。しかも、だからこそアビガンは医薬品承認はされているものの薬価収載されておらず、一般には流通していない。国が備蓄しており、新型インフルエンザが発生し、必要と国が判断し使用許可を出した時に限って処方できる薬なんです」
しかも、本来の新型インフルエンザ用での使用に当たっては、国は富山化学側と臨床結果を報告する契約を結んだ特定ないし第1種感染症指定医療機関にしか卸さない。それだけ厳重なのだから当然、使用に当たっては前述の副作用の危険性が厳しくいわれ、妊娠する可能性がある婦人に投与する場合は投与前に妊娠検査を行う、男性患者に投与する場合にも、その男性の精液で相手女性が妊娠したら同様のリスクがあるので投与から1週間は性交渉を行わないように指導するほど厳しいのだ。
したがって、①の指摘は当たらないだろう。
そして②だが、これも本来はあり得ない話だ。
 なぜなら、厚労省が出している資料(横右写真)でも明らかなように、国は新型インフルエンザ発生に備え200万人分を備蓄することにしているのだ。
確かに、服用の違いから、新型コロナ患者に投与する場合には一人当たり3倍いるので、こちらに流用した場合は約70万人分に減る。だが、現在もわが国の新型コロナの感染者数は1万7000名もいないし、内6000名近くがすでに退院している。全員に投与するとしても1万人分もあれば足りるのだから何ら問題ないはずだ。
「ところが、富山化学に問い合わせすると、新型コロナ用にアビガンの備蓄量を200万人分まで増量するという。つまり、国は規定通り、200万人分備蓄してなかったのではないか?
だが万一、備蓄ゼロだったとしても、新型インフルの季節はもう過ぎたし、今、喫緊の課題は新型コロナでこれ以上死者を出さない、医療崩壊を防ぐためにも、生産した分をそのまま新型コロナ用に回せばいいだけのことでしょう。備蓄なんていっている事態ではない。それは“不作為の作為による殺人”では」(厚労省関係者)
そんなわけで、いま、一部事情通の間でアビガンの承認を後回しにしている理由として、対中国問題との説も出ている。
このアビガン、富山化学が開発したのは前述したが、同薬は2014年に承認された。そして16年、富士フィルムは中国の製薬会社「浙江海正薬業」(浙江省)と特許ライセンス契約を結んだが、これは19年に契約終了。そして中国での物質特許も失効している。
したがって、今回、武漢で使用されたアビガンは正確には中国医薬品会社のジェネリック。
ところが、前述のようにわが国は意味不明?の備蓄を名目に、また、未だ治験が十分でないとして新型コロナ用に承認していない一方で、例えば、茂木敏充外相は4月28日の記者会見で、アビガンにつき70カ国以上から提供要請を受け、このうちフィリピン、マレーシア、オランダ、インドネシアなどに38カ国に無償供与するといっている。また、イスラエル ドイツにはすでに提供している。
 これに対し、中国はすでにジェネリックをトルコ、タイ、ドイツに提供している。
「要するに、いまアビガンを承認しても、儲かるのは中国のジェネリックだけで敵に塩を送るようなもの。富士フィルム側は儲からない。それなら、今のうちに世界中に売る分を増産し、それから承認した方がいいと。まさかとは思いますが、そんな思惑があるのではと思ってしまいます」(同)
それにしても、なぜ、ギリアドのべクルリ―なのか?
そこで思い出していただきたいのが、抗インフルエンザ薬の「タミフル」(一般名はオセルタミビル)。
製造しているのはスイスの大手製薬会社「ロッシュ」だが、その開発をし、製造ライセンスを供与しているのは、今回登場のギリアド・サイエンシズなのだ。
このタミフル、ほとんど効き目はないどころか、死をも招く重大な副作用がかなり高いにも拘わらず、そのほとんどをわが国が購入し備蓄しているのは本紙でも再三、過去、指摘して来た通り。
しかも、国防長官に就任するまで、このギリアドの会長を務めていた(1997年1月から2001年まで)のがドナルド・ラムズフェルド氏(横右側写真)で、同氏と安倍首相が(間接的ながらも)仲良しであることも、本紙は過去に報じている
こうした事実を思えば、これもまたタミフル同様、そして米国の武器同様、米側の外圧によるものだろう。
しかも、これは穿った見方かも知れないが、「富士フィルム・古森会長のお友だちぶりがいわれるなか、米国の薬を先に承認すれば、その批判を和らげられる」?
いずれにしろ、予断と偏見を持たなくても、今回のギリアドの初承認はおかしいといわざるを得ず、アビガンの件といい、ともかく国民の命より別のものをわが国政府、安倍政権が優先していると批判されて当然だろう。

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