アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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(弁護士などのプロが調査。ただし、公益性あるケースに限る)

「マンション大規模修繕工事業界のドン」の正体(2)

 この連載(1)では、大規模マンション修繕工事は、①施工会社の談合(割高で落札)と、施工会社を指名する設計コンサルタント会社へのバックリベート分もあり、本来もっと安くできるのに、マンション住人は少なくとも2割程度高い修繕工事費を払わされることが半ば常態化していること、②そして、このマンション大規模修繕工事業界を仕切る「ドン」が存在することを指摘した。(冒頭写真=連載(1)でも紹介した『週刊ダイヤモンド』2017年2月4日号記事=「業者にだまされない--マンション管理と大規模修繕」より)
本紙がこれまでアンタッチャブルだった「ドン」の存在を指摘出来たのは、今年3月から公正取引委員会がマンション大規模修繕工事専門施工会社について談合の疑いで調べ出したこと、そうしたなか「ドン」を糾弾する「告発文」が7月から出回り出したことが大きく、この連載(1)では、その告発文も有料記事部分で公開した。
今回は、この告発文の真偽について検討する。
この告発文の最大の目玉は【7.実例一覧】だろう。
そこには、設計コンサルタント会社「T.D.S」(東京都中央区)と、別の設計コンサルタント「D」の社員が住むマンション計8つが羅列されている。
そして、T.D.Sの社員が住むマンション5つの内4つはこの別の設計コンサルタント会社D社(残り1つはT.D.S自身)、D社の社員が住むマンション3つすべてはT.D.Sが、各マンションの大規模修繕工事の際のコンサル(施工会社選定も含む)をしていることになっている。
「マンション大規模修繕工事業界のドン」とは、すでに連載(1)で指摘したように「岡俊英」氏(右横写真。70)。その岡氏はT.D.S元社長・会長で現在は顧問。そしてT.D.Sのオーナーでもある。
つまり、この告発文作成者がいいたいことは、社員をマンションの区分所有者として住まわせ、その者がマンション管理組合の理事会や修繕委員会に入りうまく誘導し、同社の息のかかった施工会社に大規模修繕工事を受注させている(見返りに、T.D.Sはバックマージンをもらう)。しかし、自社が大規模修繕工事のコンサルをやるのは余りに露骨だから、仲のいいD社に受注させている。そして、「ドン」岡氏がオーナーのT.D.Sはこの業界に力を持つからこそ、D社社員の住むマンションの大規模修繕工事は3件ともT.D.Sが受注していると。
もし、岡氏(=T.D.S)を頂点とする組織構造がなければ、この8つだけにしろ、こんなに見事にD社とT.D.Sだけが互いにコンサルを受注することなどあるわけがないといいたいのだろう。
本紙は、この告発文を見せ、岡氏、それにT.D.S社長の大森勇氏にも取材している。
このT.D.S社員が住む5物件のなかには岡氏、大森社長が住むマンションも入っている。そして、岡氏も大森社長も、自身が住むマンションの大規模修繕工事に当たっては、事前に管理組合に対し自分が大規模修繕工事のコンサル会社の会長(当時)、社長であることを名乗り、会社(=T.D.S)は一切関与しないとの「誓約書」まで出したと。また、自分らのマンション大規模修繕につきD社が受注したことにつき、岡氏は、そこの管理会社とD社は仕事上のつきあいがあったこともありスンナリ決まったと。また、大森社長はD社は豊洲エリアで実績があってのことなどと語った。
さらに、巷では問題コンサル会社は、大規模修繕工事を息のかかった施工会社に受注させ、同施工会社からバックリベートを受け取った後には、その区分所有権を売り払い、また別のマンションに引っ越してそこでも同じことを繰り返すとの指摘もあるが、岡氏にしろ、大森社長にしろ、そのまま住み続けているとして、告発文の「コンサルタント選定から工事受注までのプロセスにおいて、恣意的な介入と不透明な資金の流れを組織的に形成している」(前文)との指摘を完全否定した。

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