他の記事掲載に追われ、実に半年近くも掲載が遅れた。
まずは、そのことを関係者にお詫びします。
さて、冒頭左端に掲げた「レオパレス21」(8848.東証プライム。東京都中野区)の今年7月17日のIRのように、「天草運送」(以下、天草略。東京都新宿区)が借りているとする2億5000万円は架空債権だとして、その債務不存在確認などを求めレオパレスを訴えた訴訟の判決が7月16日に東京地裁であり、本多智子裁判長は架空債権とは認められないとの判決を下した(ただし、時効により約1億2000万円の残金の請求は認めない。天草は控訴)。
この訴訟を天草が起こしたのは2022年5月のこと。本紙はこの架空債権疑惑のことを、レオパレスにも取材し、同年12月に報じている。
本紙ではその前、同じ12月に「『レオパレス21』による、訴訟相手潰しのための情報操作疑惑」というタイトル記事も報じている。
そちらも是非見ていただきたいのだが、端的にいえば、その約3年前にレオパレスの「施工不良問題」が持ち上がり、創業家出身の2代目社長だった深山英世氏は引責辞任、そして20年9月、同社は米投資ファンドの支援を受けることに。
その結果、取引先だった天草はコスト削減を理由に仕事を切られるのだが、その真相は、レオパレス創業者で元社長の深山祐助氏(78。冒頭右写真)と天草オーナーの恩慈宗武氏(86)は大学時代(ただし、遅くに入学したため恩慈氏は2期だけ先輩)から公私共に親密な付き合いのなか、レオパレスの”闇の部分”(「家電不適切処理」もその一つ)も知り、かつ、恩慈氏が正論を言うなか、疎ましくなり切ったようだ。
今回、訴訟になった2億5000万円の架空債権疑惑にしても、その融資があったのはレオパレスがまだ「ミヤマ」の社名で、店頭公開する(1989年2月)前のこと。天草の主張によれば、ミヤマのダミーで不動産を購入、その際、別途、天草の運転資金として借りたことにしてくれと頼まれ、実際は一銭も融資を受けていない。深山祐助氏との深い信頼関係のなかで、何の得にもならないが引き受けた。ところが、今になってレオパレスはその残金の支払いさえ求め、天草を潰そうとしていると。
それだけ聞けば、読者は特に関心を向けないかも知れないが、この2億5000万円の返金は、天草主張によれば、架空のものだからレオパレス側が裏でカネを出して返済のかたちを取るなどしており、したがって粉飾決算疑惑も浮上。だから、レオパレスは必死になっているという。
ところで、これまで述べたように、1審では、裁判所は2億5000万円の融資はあったとされた。
しかし、実は判決文を見ると、いくつも「仮装合意を推認させる」と言っている。そして、レオパレスはこの架空債権との天草の主張を「失当」と主張しているが、判決文では、天草の「通牒虚偽表示」との主張自体は「失当であるとはいえない」とも述べているのだ。
わかりやすく言い切ってしまえば、架空との証拠はいくつもあるが、総合判断すると(再度、形だけ双方で残債務の契約書を巻き直していることが大きいと思われる)「架空債権(=「通牒虚偽表示」)とまで認めることはできないと言っているのだ。
以下、判決で「仮装合意を推認させる」と認めている部分(横写真は判決文の該当ページ)を要約、平易な表現に直して列記しておく。
①契約では2012年3月28日が最終の返済期日で、まだ少なくとも7000万円以上の残金があったのに、それ以降、今回訴訟で反訴するまでレオパレスは天草に対し弁済を求めていない。
②天草の本社不動産に設定されていた抵当権を、まだほとんど返していない1992年3月12日にレオパレスは解除している(右上写真)。
③東京国税局は2012年2月、天草の税金滞納を理由に、天草がレパレスに対して持つ売掛債権を差し押さえるが、その状況のなかの天草とレオパレス側の面談のなかで、天草の関係会社にレオパレスが仕事を回すこと、深山祐助氏が個人的に7000万円貸すことを書面で約束、また実行された。
④2億5000万円の借金返済のため、レオパレス側がその月々の利息や元本の一部に相当するカネを天草側に振り込んだり、交付していた。また、調査費用などの名目で架空または水増ししてレオパレス側が捻出したこともあった。
これを見て読者はどう思うだろうか。
一般常識からすれば、架空債権でなければあり得ないことではないか?
③にしても、税金滞納の事実を知れば取引停止こそしても、逆にレオパレス創業者で社長だった深山祐助氏が7000万円も貸すだろうか?
さらに決定的なのは、まだほとんど返済していない、融資から約3年後、担保になる天草本社不動産に付けた2億5000万円の抵当権を解除するか? 間違ってもあり得ないことだろう。
しかも、さらにこの訴訟でおかしいのは、原告の天草だけでなく、被告のレオパレス側も、深山祐助氏を証人申請。それを裁判所も認め複数回呼び出ししたのに、深山氏は出なかったことだ。
前述のように、この2億5000万円の架空債権疑惑は、1989年とずいぶん前のことで、当時社長で、まさにこの契約を結んだ当事者が深山氏。だから、最重要の証人だ。
しかも、当初は病気を理由とし、最後は理由さえいわず拒否したという。