本紙では今年2月、5月と2度に渡り、福岡のマンション「サンライフ別院通り」(冒頭左写真。北九州市門司区。42戸。完成は2022年5月)の件を取り上げている。
施主は、福岡県の地場大手分譲マンション会社「タイヘイ」(冒頭右写真。北九州市小倉区。伊藤俊樹社長)。
2月の記事では、ゴキブリが大量発生していることを訴えても、タイヘイはマンション売買契約書のアフターサービス対象外といい、真摯に対応してくれないことを。5月の記事では、マンションに多数のひび割れ(クラック)が発生したが、本格的な検査もせず、しかし新築マンションでは乾燥して当然に発生し得る表面上のもので安全性に問題ないとして、これまたタイヘイはキチンと対抗しないとの住民側の主張を紹介した。
本紙がこの件を取り上げるのは、詳細は後述するが、タイヘイ自身、下請け会社など外部の者任せで一切現場も見ないというこれほど露骨なケースは稀である上、途中からではあるが、管理組合が交渉(個別の住民ではなく、基本的に住民が結束して要求している)というケースも少ないと思われ、この手のトラブルは水面下で多数発生しているが大半は泣き寝入りのなか、住民側にとって何らかの参考になればとの思いもあってのことだ。
住人側とタイヘイがまずゴキブリ問題で対峙するようになったのが2022年7月。すでにそれから2年以上経過するが、この8月19日、管理組合は小倉簡易裁判所に調停申し立てを行った。
調停とは、裁判のように勝ち負けを決めるのではなく、話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続。 調停手続では一般市民から選ばれた調停委員が、裁判官と共に紛争の解決に当たる。
ただし、管理組合が調停を望んだわけではない。
8月9日、タイヘイはマンション住民の各ポストに「重要なお知らせ」とのタイトルが付いた文書を投函。その文書で、調停することを宣言していた。これを受け、ならば自分たちの方からと申立したに過ぎない。
ここで重要なことは、管理組合が調停申立した際の書類の「紛争の要点」(横写真)のところにも記されているように、「我々住民はタイヘイ社が一度も(現場を)見に来ることなく、管理組合との面談の約束もして貰えず、住民に対する説明会も開いて貰えず、不安でしかない状態です。事業主(売主)としての責任を果たす姿勢を見せて下さい」と記されているように、売ったら後はひたすら逃げるかのようなその無責任としか思えない姿勢だ。
しかも、8月9日のタイヘイが配布した「重要なお知らせ」の内容のなかには、ゴキブリの件では、大量のゴキブリを発見した住人の1人が、入居2日目にその事実をタイヘイに指摘し対処を要求したに過ぎないのに、「精神的に苦痛があるので補償を請求する」と言ったと虚偽の内容を記し、未だ事情をよく知らない住民に対し、住民の中に輩がいてイキナリ金銭を要求しているかのような印象操作をしている悪意性を感じないわけにはいかない。
クラックの問題にしても、住民側は複数の専門家に相談し、現場の外見を見てもらったところ、構造的欠陥の可能性もあるということで、キチンとした調査(これにはかなりの費用がかかる)をしてくれと要求しているのに、繰り返すが、タイへイは住民側と1度として会いもせず、現場を見ることもせず、これという根拠を示すこともなく、構造的欠陥はないと一方的に言っているだけ。
これでは、「弊社と管理組合との意見や方針が一致せず、解決に至って」ないのは無理もないではないか。