2015年に起きた明治学院大学による寄川条路教授(当時)の授業盗聴と、同教授の解雇事件については、その裁判の結末(2019年に東京高裁で和解)も含めて、本紙アクセスジャーナルで報じている。
本書は大学側が解雇理由に掲げたもうひとつの理由「教授の教科書は不適切である」に焦点をしぼり、大学側、教授側、そして裁判所側のそれぞれの判断を客観的にまとめた本となっている。
大学側が「不適切」とした本は『教養部しのろ教授の大学入門』など3冊。いずれも寄川教授がペンネームで執筆した本で、授業のテキストとして指定された。架空の「平成学院大学」を舞台に大学教育や教員、学生を風刺する表現があったことから、「キリスト教による人格教育を茶化し愚弄する教科書」と大学側の逆鱗に触れた。
すでに和解した案件について今さら掘り下げるのもどうか、と思うかもしれない。ただこの問題、明治学院大学という日本最古のミッションスクールを舞台に「学問の自由」や「信教の自由」が問われた珍しい案件だ。「教員に対しキリスト教組織への隷属を求める明治学院大学は、学校の方針に従わない教員を容赦なく排除してきた」ことが明るみに出た本件には、もうひとつの解雇理由について掘り下げるべき理由はある。
なお「授業盗聴」事件については『実録 明治学院大学〈授業盗聴〉事件』がすでに出版されており、本紙でも紹介しているので参考にしていただきたい。