4月11日、奈良地裁(寺本桂子裁判長)は、厚労省による生活保護の減額は生活保護法に違反するとして減額処分を取り消す判決を下した(左写真はNHKニュース)。同種の裁判は全国29都道府県で起こされているが、3月下旬に出た青森、和歌山、さいたまの3地裁でも原告(生活保護費受給者)が勝訴。このところ国側が次々と敗訴。これで原告の勝訴は9件目となる。
寺本裁判長は、厚労省が独自に算定した物価指数について、「教養娯楽費の影響を過大に評価」していると指摘し、生活保護世帯の消費実態が適切に反映されておらず、「統計などの客観的数値との合理的関連性を欠く」ため、減額処分は違法だとしたもの。
ただ、この一連の「いのちのとりで裁判」で、原告側に立って厚労省を追及している元中日新聞記者の白井康彦氏によれば、厚労省が算定した物価指数そのものが「最悪の統計データ擬装(改ざん)」であり、「物価偽装」だと厳しく批判している。厚労省は先に減額ありきで「物価偽装」したのであり、本来はそれ自体が大問題なのだが、大手メディアは政権に忖度しているのか、この点を大きく報道していない。
もはや岸田政権は「物価偽装」を認め、裁判続行を断念すべき段階に来ている。この「物価偽装」は、生活保護費減額を公約とし政権に返り咲いた第2次安倍政権時(2013年)に厚労省が政権に忖度して行われたと思われる。岸田政権はこの裁判状況を見て、時間先延ばしするのではなく、率先してキチッとそのツケを清算すべきではないか。その一つの目処は、4月14日の大阪高裁判決ではないか?
なお、本紙アクセスジャーナルYouTube版ではつい先日、「物価偽装教室」と題して、原告側に寄り添い続けている白井氏本人に来てもらい、その史上最悪といってもいい厚労省の「物価偽装」のカラクリにつき解説してもらっている。是非、ご覧いただきたい(2回に分けて配信。1回目はココをクリックのこと。2回目はココ。無料)。
*奈良地裁判決後の原告側の会見映像(前出・白井氏のYouTubeより)