アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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連載『詫びる覚悟はできてます』第13回「感動の代償」

中井仲蔵

【この連載は……】普段は某中小企業に務めつつ、こっそり雑誌やウエブ媒体に原稿を書くコラムニストの中井仲蔵が、あまり話題にならなかったニュースを拾い起こしてみようというものです。およそ月に2回くらい掲載したいと思っております。
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昨年の「Tokyo2020」で感動したという皆さんにご報告です。
新型コロナウイルスの影響で、一年遅れで開催されたこの東京オリンピック&パラリンピック。
皆さんの感動と引き換えに、神宮外苑のイチョウ並木(冒頭写真)がほとんど伐採され、代わりに高層ビルが建つことが決まりました!

明治神宮外苑といえば、もともとは明治天皇を記念するために造られた施設ですが、今では東京五輪のために新築された国立競技場や東京ヤクルトスワローズのホームの明治神宮野球場、スケートリンクやバッティングセンターやゴルフ練習場などなど、充実した運動設備で東京都のスポーツの中心地となっています。
一方で、青山通りから聖徳記念絵画館に向かうイチョウ並木は、都内でも有数の風光明媚な通りとして知られています。これをお読みのかたの中にも、道に積もるイチョウの葉を踏みしめながら恋人とデートしたり、銀杏を拾って夕食の一品に加えた、なんて人もいるはず。

そんな都民の癒しの場所に、なんでまた無粋な高層ビルなんぞ建てなきゃいけないのでしょうか。

首都圏にお住まいのかたならご存じのとおり、神宮外苑は新宿区と港区にまたがる超超超一等地です。土地デベロッパーからしたら、あの辺りに巨大商業施設をバーンと建てて儲けたいところでしょう。
ところが、神宮外苑近辺は東京都の「風致地区」に指定されているので、景観を損ねないために15M以上のビルは建てちゃいけないことになってたんです。
そこで利用されたのが、敷地内に建つ国立競技場と、東京五輪でした。

 以下は数年前、国立競技場建て替え問題の際に、そのあたりを取材したという高街道渋也さん(仮名)に、当時の取材メモを見ながら説明していただきましよう。
なお、高街道さんは某マスメディア勤務のイケメン記者なのですが、
「アクセスジャーナル編集長の山岡俊介さんと仲がいいと職場の連中に思われたら出世できない」
という理由で、仮名にするのを条件に話してもらいました。

「国立競技場を建て替えるってことでデザインコンペがあったんですが、これがまた胡散臭いコンペでして、募集資格を満たしている建築家は多く見積もっても世界中に10人もいなかったんですよね。さらにデザイン募集要項の発表から、応募登録・受付までわずか2か月。そのまた2か月後には決定という異例のスピードで進められたんです」(高街道さん)
早い話が出来レースだったというのです。

「さらに、そのコンペの募集要項が、なぜか”70Mの建築物”ということになっていたんです。
 結局、イギリス人建築家のザハ・ハディトさんのデザインが採用されたわけですが、そこで描かれた建築物は当然70Mありました(横写真=ザハの新国立競技場をグーグルアース上で3Dで見ることが出来、その場合の景観)。
そこから先が無茶くちゃな話なんですが、ザハ案の採用後は、”こんないいデザインなんだから、不採用にするのはしのびない。いっそのこと、風致地区の条件のほうを変えてしまおう”と、無理やり条例のほうを変えちゃったんです」(高街道さん)

ザハさんの設計は、よく言えば斬新、悪く言えば荒唐無稽で、実際に建てるには予算も技術も工期も、とうてい足りない代物だったとか。
その後、ザハさんが死んじゃったこともあり、彼女の案は白紙撤回に。いろいろあって隈研吾さん設計による、高さ47Mの新国立競技場が建てられたのでした。

「オリンピックみたいに国のお金が大きく動くプロジェクトは、やっぱり大きな利権がからんできますからね。
動く金も半端じゃない。五輪の組織委会長だった森喜朗元首相や安倍晋三さん、石原慎太郎さんや猪瀬直樹さんたちがあれだけ招致に必死だったのは、何だか納得できますよね」(高街道さん)

そもそもオリンピックというのは、人類の進歩と調和を標榜する平和の祭典のはずなんですが、言われてみれば東京2020は招致の段階からずっとおかしなことが続きました。
安倍晋三さんがIOCの演説で「福島は完全にコントロールされている」なんて嘘八百を並べたのを皮切りに、JOCの竹田恒和会長による招致委員買収疑惑、エンブレムのパクリ問題、森喜朗組織委会長や桜田義孝五輪担当相、演出担当者たちの相次ぐ辞任などなど、日本がいかにロクでもない国に成り下がったかをまざまざと知らされる大会でした。

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