連載第2回に続き、夫ではなく、妻側が子どもを連れ去られたケースを紹介する(*ただし連載2回目のケースは連れ去った夫側に親権を認めたが、こちらは①「子どもの引渡し」の調停・審判、②「監護者(ほぼ=親権者)」の調停・審判、③「①と②の保全処分」のいわゆる3点セットの①は棄却されたものの、まだ①②を審判で争っているところ)。
連れ去りの多くは妻と思われるのに、夫の方のケースをあえて取り上げるのは、連載2回目でも紹介したように、世界の潮流である「共同親権」制度(わが国の法制審議会で今年初めて審議対象になっている)に対し妻側の反対の声が強いため。わが国でも共同親権制度が導入されれば、妻も連れ去りで子どもに長年会えなくなることはなくなるからだ。
余談だが、3月に入り、「天才卓球少女」として一世を風靡した福原愛さんの離婚騒動が話題になっているが、夫は台湾人で、台湾は共同親権制度なので、少なくともまだ幼い2人の子どもの親権を巡って揉めることにはならないようだ。
母・佐藤明子 35歳
大阪生まれ、大阪在住。
社内結婚。
12年結婚。16年第一子出産。19年第2子出産。
価値観の違いから離婚を考えていたところ、たまたま仕事の集まりで帰宅が遅くなることを知っていた夫は、その留守の際に2子を同じ市内の夫の実家に連れ去った。昨年9月のこと。置き手紙には、「(妻に)出て行けといわれたので、出て行きます」旨、弁護士の連絡先と共に記されていた。
後に夫は連れ去りの前に弁護士に相談していただけでなく、弁護士から(連れ去れば子どもの親権を取れる可能性が高くなるからと)指示されていたことが明らかになった。家裁調査官の「調査報告書」のなかで、夫への聞き取りでその旨、自白していることが明らかになったからだ。
価値観の違いというのは、例えば、子どもが自分の好きなものをねだり作った食事をどうしても食べないことから、妻が教育の一環として食事を下げたら、それを見た夫は冷蔵庫から好きな食べ物を出して子どもに与えるなど、気まぐれに妻の子育て方針に背くことをしてまったく自分は悪いとは思わないどころか、自分は子どもを大切にしていると勘違いしていること。また、両親離れが出来ておらず、実家が近いこともあり、節句、誕生日など折に触れ子どもの行事に夫の両親が来て交流。ただし、その際のすべての準備は妻任せ。そして転職という大事な相談も夫は妻ではなく自分の両親にしていて、結局、転職しなかったら義父は涙を流して喜んでいたとも。夫婦仲がギクシャクしていたことも妻ではなく、同じく自分の両親に相談していたことが明らかに。
幸い、子どもには月に2度ほど会えているが、それは夫は自分の寛容さをアピ―ルするためで、もし夫が親権を取ったら子どもに会わせてくれないと思っているとのこと。また、妻が親権を取れたら、夫は養育費を払わないだろうという。そうなれば、結局、夫は自分勝手で、子どもが本当にかわいいから連れ去ったのではないことがハッキリするという。
〇佐藤さんが特に主張したいこと
・裁判官、調査員への不信感
・お母さんの方が子どもを連れ去られるケースが増えている
・子どもを連れ去られた妻に対する周りの誹謗中傷
・弁護士の連れ去り指示の犯罪性