提訴は今年3月中にしていた(冒頭左写真はその訴状)のだが、なぜかパチスロ大手「ユニバーサルエンターテイメント」(以下UE略。旧アルゼ。6425。JQ)のHPを確認してもこの件はIRされていない。そのため本紙も最近まで知らなかったのだ。
だが、この提訴、検討すればするほど、疑惑を追及する相手に威圧目的で起こすSLAPP(スラップ)訴訟と思えて来るので、今更ながら報じることにした。
まずは19年10月の本紙既報記事をご覧いただきたい。
この記事のように、19年8月、UEのある株主が同社の富士本淳社長(冒頭右写真)に対し4350万ドル(日本円で約35億円)の損害賠償を求める株主代表訴訟を提起した。富士本氏はUEから第3者の個人口座に米国ドルで同額を送金したが、これは内部的意思決定手続きを経ず、合理的理由もないもので、同額の損賠をUEに与えたからというものだ。
いうまでもないことだが、株主代表訴訟は、株主が会社に提訴請求し、それから60日内に会社が訴えをしない場合に行われるものだ。そして、例え勝訴しても、株主に請求金銭が入るわけではない。あくまで自分が投資している上場企業たるUEの利益を守るためで公的な性格を持つ。
そして、この4350万ドルの疑惑の送金をこの株主が知ったのは、UEの創業者で元代表、当時まだ取締役会長の地位にあった岡田和生氏の指摘によるもので、しかも、その岡田氏の別途4000万ドルの送金疑惑も出るなかでのことだった。そして、この岡田氏の指摘に対し、富士本氏は合理的な弁解が出来ず、その後もしなかったことから提訴したという。
ところが、これに対し、UE、富士本社長個人は、株主と代理人弁護士2名が東京地裁の司法記者クラブで記者会見し、配った「提訴報告会見概要」は虚偽の事実を含んでおり、しかも株主も代理人弁護士2名もこの送金疑惑が岡田氏の一方的な主張と認識していたなどとして、原告の名誉・信用棄損の不法行為に当たると、被告3人は共同してUE、富士本社長個人それぞれに1100万円ずつ、総額2200円を払えと提訴した。