この連載(1)で、今回の山口補選に自民党候補として出馬することが決まっている江島潔氏(55)が下関市長の5期目立候補を辞退した理由として官製談合疑惑などが出て悪評が拡がり、立候補しても通らない可能性があるなか、後ろ盾の安倍晋三首相サイドからも「悪いようにしないから、今回は辞退しろ」旨の声があったのではないかとの複数の地元関係者の声を紹介した。
連載(2)では、立候補辞退のもう1つの大きな理由となったと見られる公選法違反疑惑について取り上げる。
05年3月、4期目の市長当選を決めた江島氏だったが、この選挙、薄氷の当選だった。
「この時の選挙は旧下関市と旧豊浦郡4町の合併に伴うものだった。しかし、この選挙では保守票が江島氏と、中尾友昭氏(現市長)に割れ、中尾氏とわずか2470票差だった。しかも江島氏は自前の後援会を持たず、旧豊浦郡での知名度はまったくというほど無かった。そちらをどれだけ取るかが大きなポイントだった」(当時を知る自民党関係者)
こうしたなか、起きたのが、当時の自民党豊浦支部長と幹事長が、同部の旧豊浦町議を集め、「江島氏を推薦します」と記したはがきと共に現金5000~7000円を渡し、はがきを出すように依頼したと見られる公選法違反事件。
公選法ではポスター貼りなどの単純作業には報酬支出を認めているが、その場合、選管に事前届け出をしなければならない。だが、現金などを受け取った旧町議らは届け出をしてなかった。
「被告発人には入ってませんが、問題の場には安倍事務所の旧豊浦町担当の篠原秘書もいて、主導的役割を果たしたと見られる。おまけに、自民党豊浦支部長は元警官。“労務費(はがき書きの報酬)のつもりだった”との言い訳は通用しませんよ」(告発人関係者)
05年5月10日、山口県警に12名が告訴され、受理された。カネを渡したこと、受け取ったことは皆、認めていた。だが、少額かつ違反になり得ることを知らず“労務費”として払っただけとの言い分が通ったようで(検察は不起訴理由を一切明らかにしていない)、06年7月に全員不起訴になった(1名は嫌疑不十分。11名が起訴猶予)。
これに対し、告発人は検察審査会に申し立てを行い、07年7月、「不起訴不当」との議決が出た。
だが、検察は再捜査した結果、08年2月、再び不起訴にした。