それは下関市の市営住宅の転売問題だ。
この問題の根はひじょうに深く、また重大だ。
なぜなら、放置した結果、いまでは同住宅には暴力団関係者が多数住み着き、あるいは闇金などの事務所にもなり、周辺では覚せい剤販売も行われ、犯罪の温床になると共に治安が悪化しているからだ。
下関市には市営住宅が114カ所に6974戸あり、約1万3000名が暮らしている(08年度)。国の助成を受けており、家賃は3DKでも1万円内と超格安だ。
もっとも、転売が横行しているのは特定の地域、下関拘置支所近くの中央、春日、東神田町の11棟(横写真。331戸、テナント31戸)。現状、その大半が転売されていると見られ、その転売価格の相場は300万円とのことだ。
「いまでは転売された者がさらに転売し、500万円なんて価格も付いている。入居者も、下関市市民ではなく口コミでお隣の福岡県を中心に全国の暴力団関係者がやって来ています」(事情通)
地元の事情通にその一画に案内してもらった。郵便受けを覗くとまったくというほど名前を出していない。また、1階のテナントの裏手に回ると防犯カメラなどのセキュリティー装置が見える(横左写真。右写真は闇金経営をしていると思われるテナント)。
「正規の入居者でないから名前を出されんのよ。何でこんなところのテナントにセキュリティーなの!? 闇金やクスリをやっているからだよ。表面的な処理しかされないが、覚せい剤でおかしくなった奴が日本刀を振り回していたり、嫌がらせで駐車場の車が放火される事件は私が知っているだけでも6回は起きてるよ」(同)
そして、こうした転売が目立って起き、さすがに新聞でも報じられたのが94年。江島氏が市長になる(95年)直前のことだった。以降、江島氏は09年まで4期約14年市長を勤め、手を付けなかったことからこの問題は恒常化し、既成事実化してしまったという。