筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
先月、渋谷シネマヴエーラという旧作専門の名画座で『G・I・ジョウ』(1945年。ウィリアム・ウェルマン監督)を観た。実はこの映画、もう何十年も前から気になっていたんだけど観る機会がなかった。というのは第2次大戦下、米軍の従軍記者として活躍したアーニー・パイルの実録ドラマなのだ。
かつて『アーニーの戦争』(89年。宝島社)というアーニー・パイルの戦場コラムを集めた本を読んだことがある。アーニーは主にイタリア戦線に従軍し、その後の沖縄戦で日本兵に撃たれて死ぬ。占領下の日本であの宝塚劇場がアーニー・パイル劇場と呼ばれていたこともあった。アーニーの凄いところは、最前線に志願して同行し、戦場の兵士たちの実際の姿や本音をきちんと書いていることで、ただの軍御用達の記者ではない、戦場ジャーナリストとしても相当なものなのだ。
映画はアメリカでは1945年の6月頃(日本では戦後に公開)に公開されている。ドイツは降伏したがまだ日本とは戦闘中だ。当然、国策プロパガンダ映画だろうと思って観たら、これが冷徹なリアリズムで一貫した力作だった。雨の中の行軍、泥まみれで眠る。あっけなく死んでゆく兵士。戦場の非情さ、兵士の日常が淡々と描かれ、あらためて当時のアメリカ映画のパワーを見せつけられたってわけ。



