筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
先月、神保町シアターという日本映画の旧作を特集上映する名画座で『野獣死すべし』(1959年東宝。監督・須川栄三)を観た。
大藪春彦の原作は学生の頃に読んだし、映画も松田優作主演(80年東映・角川。監督・村川透)のは観たけど、仲代達矢主演(当時27歳)はずっと見逃していたのだ。主人公の伊達邦彦は、大学院生でアメリカ留学もした秀才だが、人殺しに快感を覚え、拳銃を手に入れて無差別殺人を繰り返す。超インテリにして冷酷非情なキャラに仲代がピッタリ。仲代の生涯の作品のなかでもベスト3に入りそうだよ。そこで考えたのが日本映画における「殺し屋」の系譜だ。
殺し屋(暗殺者、スナイパー、ヒットマンでも)というのは基本的には高額なギャラで殺しを請け負う商売で、相手が誰であろうと関係ないし、正義の味方ではない。そこから見ると伊達邦彦は厳密な意味では殺し屋ではないし、ただのサイコキラーに見える。それでもこれこそ純な(?)殺し屋といえなくもない。そんなわけで魅力的な「殺し屋映画」を振り返ってみたい。
そのものズバリで思い出すのは、鈴木清順監督が日活をクビになる契機となった伝説の傑作『殺しの烙印』(67年)の宍戸錠だね。あまりにもシュールな展開で日活の上層部が怒り心頭だったという。面白いのは主人公がご飯が炊ける匂いにエクスタシーを感じちゃうところだ。宍戸錠はメチャクチャカッコよくスタイリッシュなのだが、どこかズッコケる感じが良い。



