2022年年末、SNS(X)上に一つの投稿が広がった。
「『GEMFOREX』から出金できない」という利用者の不安の声だった。
GEMFOREX(ゲムフォレックス)は海外のFX取引所。
しかし、1000倍以上の高いレバレッジ、追証が発生しない、さらに「日本製のFX会社」であると自社サイトで謳い、日本人ユーザーをメーン顧客にしていた。おまけに、ボクシング史上初の8階級制覇王者・マニーパッキャオ、元サッカー英代表選手・ベッカムをブランドアンバサダーにしていたこともあり、利用者は数千人、その証拠金総額は実に200億円とも見られている。
「出金できない」との投稿は瞬く間に拡散し、同じ状況に置かれていた数千人の利用者が次々と声を上げ始めた。SNS上での、いわば「取り付け騒ぎ」だった。
だが、この騒動に対するGEMFOREX運営側の説明は奇妙なものだった。
「LP(リクイディティプロバイダー)の審査で遅れている」という、利用者には意味のわからない言葉で出金遅延を説明したのだ。その後、運営側は2023年2月4日付の公式リリースで説明を変更する。
「第三者による名義貸しや口座転売、ボーナスを利用した利用規約違反などが急増し、集団による違反行為に歯止めが効かなくなった」。
被害者であるはずの利用者に、その責任を転嫁するかのような説明だった。さらに運営側は「証拠金を返金する」と繰り返し説明しながら、その約束が履行されることはなかった。
では、出金されないまま宙に浮く200億円とも言われる資金はいったいどこに消えたのか!?
その謎を解く前に、GEMFOREX設立からの経緯を振り返ってみよう。
2010年 GEMTRADE設立
2014年 「GEMFOREX」としてFXサービス開始。ただし、日本の金融庁への登録はしていない。
2015年10月 金融庁(関東財務局)から無登録営業として警告を受ける しかし、その後もサービスは継続された。
2022年12月 出金遅延が発生。
2023年2月4日 公式リリースによれば、「LPの審査」という当初の説明は変更され、第三者による名義貸しなど利用規約違反が原因と開き直られる。
2023年5月30日 サービス停止の「前日」、 運営は「本日開催!0時より最大100%ボーナスキャンペーン開催!」と題するメールを顧客に一斉配信。翌日にサービスが停止されることを知りながら、最後の入金を顧客に促していたとすれば、それは計画的な詐欺の可能性が高い。
2023年5月31日 突然のサービス停止。多くの利用者が資金を回収できない状態に置かれた。
2023年8月 顧客への十分な説明もなく、突然現れた暗号資産業者へ事業を譲渡。顧客の同意は求められなかった。
2024年1月 顧客資金を一方的に暗号資産トークンへ強制変換。これまた、顧客の同意は求められなかった。
2026年2月 「Gemtrade正式破産手続き中」と公表。全サービス終了。出金停止から実に3年以上経て、今ごろ暗号資産業者への事業譲渡(M&A)は正式成立していなかったと説明しサービスを終了。ただし、セントビンセントおよびグレナディーン諸島の会社登録機関のデータベース上ではGemtrade LLCは依然として「Active」のままである。「破産」と「Active」の矛盾は、今も解消されていない。
さて、謎を解く一つの手がかりは、この時間軸のなかで、GEMFOREXの設立者と思われる日本人が、わが国の国会議員に政治献金をしていた事実だ。
公開されている「政治資金収支報告書」によれば、出金遅延が発生した2022年10~12月にかけて、以下の人物の名が、寄付者として記載されている。



