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<復活!!>『田沢竜次の昭和カルチャー甦り』第169回「恐怖の『犬』映画はこれだ!」

筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。

 こないだ『うわべの名画座 顔から見直す13章』(姫野カオルコ著。ホーム社。2025年8月刊)を読んでいて、映画の中の犬について書かれた章が面白かった。映画と犬といえば、おなじみ『ハチ公物語』とか『南極物語』のように人と犬の美談が多い。しかしここで著者がまず取り上げているのが『遊星からの物体X』(82年。ジョン・カーペンター監督)。
 こちとらもSFホラー映画のベスト3に入るくらいで5回くらい観たけど、冒頭から登場する犬が凄いよ。南極基地に迷い込んできた犬(ハスキー犬といってなかなか立派な犬だ)が、実はエイリアンが体内に入り込んでいて、その正体が明らかになるシーンが強烈。犬の体が裂けてグロテスクな怪物に変貌するところはマニアの間でも評判になった(そのフィギュアまで出来たくらいだ)。
 さらにこの章で登場するのが、(映画ではないが)昭和30年代の人気テレビ番組『少年ジェット』(70代のジジイは少年時代に夢中になった)にレギュラー出演していたシェパード(シェーン)なのだ。主人公がオートバイで走る時に併走する忠犬なんだけど、これといって活躍するわけでもなく、『遊星~』に比べると凡庸なシェパードだ。それでも当時はあの『名犬ラッシー』がテレビで大評判だった頃だから日本の名犬ここにありってなライバル意識か、シェーンが登場すると誇らしかったもんだ。そんなわけで犬の映画を思い返してみると、これぞおすすめの最「恐犬」映画が2本あった。


 まずスティーブン・キングの長編小説を映画化した『クジョー』(83年。ルイス・ティーグ監督。原作は『クージョ』)。これは狂犬病に罹ったセントバーナード犬が人を襲って殺すお話で、映画では、執拗な襲撃で母と息子が車の中に閉じ込められ脱出不可能の危機に陥る。犬がドーベルマンだったら、いかにもなんだが、セントバーナードというのが異色。善人だと思われた隣人が殺人鬼だったときのショックみたいなもので、狂犬病になったセントバーナードは本当に怖い。図体もでかいので凶暴なヒグマやイノシシが襲ってくるのと同等の恐怖なのだ。ちなみに撮影では複数の犬とレプリカも使っていたという。ただ映画は宣伝がいかにも安っぽい感じだったせいか客の入りも悪かった。原作はキングの描写がうまくてドキドキハラハラの連続、まさに手に汗にぎる展開のサバイバル・ホラーというか「閉じ込められホラー」の傑作だった。リメークする話もあったみたいだが実現せず、動物愛護団体からクレームがついたのかも知れない。
 お次は『魔犬ホワイトドッグ』(82年。サミュエル・フラー監督)。これは白人至上主義グループ(クー・クラックス・クランなど)によって黒人を襲うために訓練された恐るべき殺人犬をめぐるスリラーだ。何十年も前に名画座で観て、最近安売りDVDで手に入れて再見した。これは傑作。特にトランプ時代のアメリカではますますリアリティのある映画になった。映画では、どこからか迷い込んできたホワイトドッグ(白いシェパードみたいな犬)を、調教チームが普通の犬に戻そうとして必死になる。そしてラスト、まともな犬に戻ったかと思いきや…で、ここでは明かせないが、ただの動物ホラーに止まらない社会風刺も込められていた。印象に残ったのは、終盤近くになって、調教チームの女性のもとに元の飼い主が訪ねてくる。いかにも善良そうなジジイで可愛い孫を連れている。ジジイはニコニコしながら(黒人を襲うために調教した)成果を「傑作だ」と誇ってみせる。女性は激怒するのだが、アメリカ社会の暗部を表現したうまいシーンだった。
 あと、ずっこけものとして『ドーベルマン・ギャング』(73年。バイロン・ロス・チャドナウ監督)なんて映画もあった。6匹のドーベルマンを使って銀行強盗をやらかすという奇想天外な発想は良いんだが、肝心のドーベルマンが意外にダメ犬で中途半端でありました。日本映画では怪談で化け猫ものは多かったけど、さすがに化け犬はないか。
 もう一つ『魔犬~』で思い出したこと。10年以上も前のことだが、都庁でテロ対策訓練というのがあって野次馬で観に行ったところ、テロリストに扮した警官にシェパードが凄い勢いで飛びついて、腕に噛みつき(防具はつけてる)、「制圧」するっていう見せ場があって迫力があった。なんとテロリストと判断すれば飛びつくように特別訓練したと解説役が自慢していた。しかしそれって結構怖い話でないのか? まさにホラー映画だよ。

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