筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
『日刊ゲンダイ』が創刊50周年で特別号を刊行したので早速購入した(550円)。創刊号(1975年10月27日)は買った覚えがある。こちとら当時は大学3年の22歳。夕刊紙といえば、「オレンジ色のニクいやつ」とかいうキャッチコピーの『夕刊フジ』が独走していて、そこに殴り込んだのが『日刊ゲンダイ』だった。名称からも分かるように『週刊現代』の「日刊」というコンセプトだったようだ。
当時の連載陣といえば、今に至るまで1日も休載なしに連載を続けている五木寛之(当時は40代前半)をはじめ、松本清張、柴田錬三郎、阿佐田哲也、野坂昭如、田中小実昌、深沢七郎、殿山泰司といった豪華な顔ぶれで、雑誌風だ。思い出すのは77年から20年間も続いたお色気漫画の『やる気まんまん』(原作・牛次郎、作画・横山まさみち)で、今だと電車の中で広げて見るのはきびしいか。もっとも昨今は車内で夕刊紙や週刊誌を読んでるサラリーマンなんていない。たまにいるのはジジイ(自分も)ばかりだって。
ニュース面でゲンダイ節(アジビラみたい)が発揮されるのはもっと後で、当初は見出しも結構おとなしくて、タイトルキャッチなどは、先発の『夕刊フジ』のほうがうまかったと思うね。一方、連載コラムでピカイチだったのは、活動家でもあった映画評論家の松田政男の映画時評(76年頃~。単行本『日付けのある映画論』に)だね。古今東西、硬軟取り混ぜ、サラリーマン読者でも納得の文章はさすがだ。それと飲み屋やランチ情報など、安月給サラリーマンのためのお店情報が充実していて、切り抜いてはスクラップにして、食べ歩き・飲み歩き好きの友人たちとよく行ったっけ。



