プロフィール 投資歴26年、兼業投資家。投資で勝つために必要なのは、1に「メンタル」、2に「需給」を読む力、3に「ファンダメンタルズ分析」だと考えている。安定した資産形成を促すことを心がけている。
≪先週の相場振り返りと今週の見通し≫
先週金曜日の日経平均株価の終値は、43,019円と前稿比+301円(※前項比+85→ +▲745→ 1558→ +1020→ ▲656→ +1637→ +249→ ▲241→ ▲348→ +1748→ +569→ +92→ ▲223→ +805→ +594→ +251→ +672→ +1125→ +976→ +1144→ ▲195→ ▲3339→ ▲557→ +624 →+166 →▲269→▲1621→ ▲372→ +362→ ▲785→▲360→+1481→▲739→▲705→+193円(大納会))となった。
先週の金曜日はPM21:30に「米国8月雇用統計」があり、予想通り雇用者数はコンセンサスよりも低く出て、発表からしばらくは金融緩和期待が高まりから米国債券は大幅上昇(※金利は下落)、そして株価指数もジリ上げとなったが米国市場が始まってしばらく経ったあたりから、突如不穏な下げを開始した。
筆者は株価の推移をリアルタイムで追っていたため初動のドンと下げた様子を目にしたが、それ以降の下げのスピードがまったりとゆったりとしたものであったため、それほど不安視していなかったが、みるみるNYダウを筆頭に米国株価指数は下げはじめ、日経平均は円高の流れもあってさらに下げ始め、しかしAM1:30頃には底打ちとなったか、そこから静かに戻して終わるという、完全なるメンヘラ相場となった。日経平均先物は42,890円で大引けとなっている。※2025年の最安値は4月7日(月)30,793円。2024年8月5日は31,156円のフラッシュクラッシュがあった。
ドル建て日経平均の終値は290.3ドル(※290.6→287.1→294.7→283.8→271→282.1→267.7→269.4→275.9→278.2→264.1→264→262→263.8→259→260→257.9→253.8→248.5→244→233.3→231.3→246.3→252→249.3→250→247.7→257.7→256.5→255.8→255.8→257.3→247→247.5→252.6→246.7(大納会))。こちらは今年の最高値は7月24日の287.3ドルが先週にあった。最安値は4月7日に211.2ドル。
NYダウは、週間で-144ドル安となる45,401ドル(※前稿比▲87→+686→+770→+587→▲1313→+560→▲30→▲457→+1010→+1612→▲565→+493→+667→▲1052→+1406→▲68→+1203→+972→▲1071→+1898→▲3269→▲401→+497→▲1314→▲1039→+413→▲1,118→+243→▲242→+121→+936→+1550→▲794→+151→▲259)。※最高値は2024年12月5日の45,074ドル。※4月7日に36,612ドルが直近最安値。
ナスダック100指数は23,652Pと、前稿比+237P高(※前稿比▲83→▲214→+101→+848→▲509→+207→+284→▲86→+333→+908→▲5→▲131→+421→+425→▲512→▲1367→▲42→+670→+1175→▲702→+1562→▲1,883→▲473→+49→▲496→▲683→▲730→▲501→+624→▲23→▲296→+333→+594→▲450→+183→▲175)であった。※4月7日に16,542ドルが直近最安値。
さて、先週の金曜日のPM21:30に「米国8月雇用統計」が発表されると、そこからメンヘラな株価推移となった世界株式市場ではあるが、筆者なりにこの雇用統計の中身について調べたので以下にまとめる。
一言で言うと「採用は控えた上で、既存社員のリストラもなるべく控える」傾向だろうか。
まず8月の非農業部門雇用者数は、市場コンセンサス予想であった+75,000人を下回る+22,000となった。ただ7月分は+73,000人→ +79,000人に小幅に上方修正。しかし6月分は+14,000人から-13,000減と下方修正されている。雇用統計でマイナスって珍しい。この結果、過去3カ月の雇用者数は月平均で+29,000人増と極めて低い数値となった。
これを受けて一部FED高官からは、雇用の均衡を維持するためには+3万~+7.5万人が必要だと発言があったし、FRBカシュカリ総裁も均衡点は+7.5万人だといっている。そして重要なことだが、この雇用統計の数字は速報値であり、その後改定されるものだということ。
その前年度分の改定値(※2025年3月時点までの1年間)は今週の火曜日に発表されるが、すでにFRBウオラー理事は「過去の月次雇用数が平均で月あたり約60,000人分下方修正される見込み」と発言している。ゴールドマンサックスも試算を出していたが、「年間で55万人~95万人のマイナス改定」を予想している。
この数字、仮に少し上振れて96万人のマイナス(※昨年は82万人のマイナス改定だったが)となった場合、月間で-8万人の減少となるが、まぁこの頃は15万人以上の雇用増が普通だったからまぁ大丈夫かな。そもそも、これは過去の数字の改定だから本来は問題にならないところだが、2025年に関しては8月までの雇用者数増は+約60万人。特に直近の3カ月は2.9万人だということもあり、これが下方修正されるとなると、【これ、米国では雇用を生み出せていないんでは】と疑念が渦巻く。そもそも2025年に入ってからの月次雇用統計の雇用者数はカシュカリ総裁が言う、均衡点にはとうてい及ばないんだが?
また8月の雇用統計の中身に関してもヒドイもので、正規の雇用がマイナスになっている分をパートタイマーで補っている構図が鮮明になっている。数百万人の労働者がパートタイムを余儀なくされているようで、質の面も非常に悪いと断言できる。そしてこれを裏付けるようにU6(やむなくパートをしている人、職に就きたくてもつけない人)は今回の8月発表で大きく上昇して8.1%に到達した。直近のコロナ禍以降の景気サイクルでは6.6%が最低ラインだったため、すでに+1.5%の上昇となっている。それに16歳~24歳の失業率が10.5%と急増したようだ。これにはかなり違和感を覚える。
というのもトランプ政権による「移民追い出し」はすさまじい成果を上げていて2025年1月~7月末までに120万人以上の移民が国外追放になったことが、国勢調査局の予備データ(Pew Research分析)からわかっている。それにも関わらず、労働者が増えていないっていうのはどういうことなんだろうか? これはもう深刻を飛び越えて緊急事態なんじゃないか。どこからどう見ても、世界最強である米国の労働者の労働環境は異常に悪化しているように思えるのだ。
筆者としては、上記の状況が明確に改善(一回景気後退して経済の再生が必要)されなければ、ここからFRBが利下げを推進したとしても、なかなか株式市場に全力投資をする気にはならない。なぜって利下げをしても、省人化のための設備投資需要が喚起される程度で、雇用にはつながらないだろう。そしてそもそも、この利下げというものは効果を発揮するのに1年程度かかるものだからだ。よって早晩、失業者数が増え出して、米国GDPの7割を占めるような米国小売売上高が悪化し、全体株価指数も暴落しだすとしか思えない。



