＜復活!!＞『田沢竜次の昭和カルチャー甦り』第153回「1965年の夏休み」

筆者・田沢竜次（フリーライター）。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊ａｎｇｌｅ』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』（主婦と生活社）を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。

　今から60年前、1965年の夏休み（小学校６年）は、今でも強烈な思い出がある。普通、夏休みの思い出といったら海だの山だのといった話になるところ、こちとらの印象に残っているのはマンガと映画だ。夏休み初めに購入した『別冊少年マガジン』に、あっと驚くマンガに遭遇した。それは水木しげるの「テレビくん」である。
実は、水木作品に出合ったのはこの時が初めてだった。ゆくゆく中学時代には、神保町の古本屋をめぐって貸本時代の作品を集めたコミックスや『ガロ』に出会うことになるんだが、この時はすごいカルチャーショックだった。テレビの中と現実を行き来できる不思議な少年を主人公にした幻想＆メルヘン＆不条理＆ブラックユーモアが混ざった傑作で、画風も今までの少年マンガにはないものだった。『少年マガジン』は、好評を受けて『墓場の鬼太郎』（のちに『ゲゲゲの鬼太郎』）の連載をスタートさせた。
　もう一つのショックは、東宝の夏休み映画『フランケンシュタイン対地底怪獣』を封切りで観たことだ。怪獣映画はそれまでゴジラものなど何本か観ていたが、これは摩訶不思議なお話で、すっかり魅了されてしまった。敗戦寸前のドイツからフランケンシュタインの心臓を運び出し、日本軍がこの心臓で弾に当たっても死なない兵士をつくる極秘計画。ところが広島の原爆投下によって消滅。そして15年後に浮浪児のような少年が出現。という荒唐無稽の展開なんだが、これが妙にそそられる。