
兵庫県神戸市在住の深田義和氏(45)は3年半ほど前に、LINEを通じた副業詐欺にあった。
発端は、独身の深田氏は婚活アプリに入っていたが、そこで結婚を匂わせて来た「長澤まさみ」を名乗る大阪在住、28歳、ファッションデザイナーを名乗る者からのアプローチ。
この大手婚活アプリ会社、厳重な本人確認を謳っていたが実際は違い、アプローチして来た長澤なる者は今では女性だったかさえ不明だ。
ほどなくLINEに誘導され、「CPS」というサイト(特定商取引法の記載無)を紹介され、YouTubeの視聴代行を行うと稼げるとして、そのためのマシン購入代金として総額約267万円の被害に会う。
これは、深田氏の給与の10カ月分以上に相当する。
深田氏、2022年9月、弁護士を見つけて訴訟提起した(令和4年ワ第1425号。損害賠償請求事件。神戸地裁)が、この手の訴訟としては画期的とも言える内容だった。
というのは、被告には前出・長澤ら以外にもLINE、三井住友銀行も入れていたからだ。
LINEも被告に入れたのは、前出CPSというサイトを運営する会社を自称する被告Aの存在はLINEアカウントしか確認できない人物で、LINEはその被告A、長澤の所在を深田氏に秘匿したまま通信するという手段を提供して、その違法行為を幇助すると共に、詳細は後述するが、深田氏代理人からの弁護士照会に回答しなかったからだ。
一方、三井住友銀行も被告としたのは、深田氏は被害に会った総額約267万円を指定された同行の銀行口座に振り込んだが、同口座は犯罪用に設けたものと思われ(この3人の口座開設者も被告)、同行は十分な本人確認をしないまま口座開設させ、LINE同様、詐欺加害者らの違法行為を幇助したからだ。
本紙がこの訴訟記録を見てまず驚いたのは、LINEは当初、弁護士照会に回答しなかったことだ。
詐欺に使われたのは明らかだから、QRコードで登録されている長澤らのアカウントの電話番号、メールアドレスなど教えて当然と思ったら、「その調査は不可能」などとして回答せず。
そして詐欺の幇助との原告主張に対しては、
「LINEのサービスを利用する場合、携帯電話のように身分証確認が行われないのは周知の事実で、本人確認義務は負っていない。また、LINEは電気通信事業者として通信の秘密に関して厳格な取扱を求められているから、LINEのサービスが詐欺に利用されている旨の認識は不可能で、弁護士照会への回答拒否は不法行為ではない」旨回答している。

一方の三井住友銀行だが、原告代理人は、口座提供者に損害賠償請求するため、口座情報から同人の氏名や住所を特定すべく、同行に弁護士照会してそれぞれ回答を得た。しかし、その3人の住所地の自治体の住民票を請求したが取得できなかった。また、その住所に内容証明郵便を出したが2人は不在で届かず、1人は宛先なしで返送されて来た(実際に3人の住所地を訪ねてみた=左写真はその物件)。さらに、口座開設時に本人確認のために出された保険証はその名義の加入履歴が確認できず、会社の方も未設立で、住民票共に偽造されたものと思われる。
ということは、同行はしっかり本人確認をしておらず、結果、口座は悪用されたことにつき同行も責任があると思うのだが、



