アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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<書籍紹介>『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(諸岡宏樹著。鉄人社)

日本の猟奇事件といえば、古くは阿部定事件(1936年)が知られる。愛人の男性を絞殺し、その局部を切り落とした事件だ。同年2月には2・26事件が起こり、翌年には日中戦争が始まるという暗い時代の話である。
そういう時代だからこそ猟奇事件が起きたのかといえば、そうとは言えまい。つい最近の日本でも、似たような事件は起きている。首絞めセックスの途中で恋人が死んでしまった男が、救急車を呼ばず放置。それどころか遺体の眼球をくり抜く等、死体損壊と死体遺棄の罪で有罪判決を受けた事件があった(2020年富山県高岡市。本書第5章「残酷事件」に詳しく載っている)。また23年、札幌ススキノを舞台にした首狩り殺人事件は記憶に新しい。
本書は『週刊実話』の連載「男と女の性犯罪実録調書」を加筆、修正、再編集し書籍化したもので、猟奇的な性犯罪事件が全41ケース収まっている。いずれも著者が裁判を傍聴し、関係者に取材したルポルタージュであり、読み応えがある。
加害者の多くはフェティシズム等、性的衝動に突き動かされ犯行に至っているが、何の罪の意識も感じてなさそうなのが怖い。「サイコパス」としか思えないのだが、とはいえ、ある種の精神疾患であることで罪を免れたり刑が軽くなるとしたら、司法への疑問を感じざるをえない。女子中学生をレイプしようとして、同居していた中学生の祖父母を殺害した男は死刑を求刑されたが、「フェティシズム障害」を理由に無期懲役となった。著者はそこで「精神障害というのはそこまで死刑への高いハードルになるのだろうか」と疑問を呈している(本書159ページ)。
ある女性の殺人事件では、警察がマークしていなかった男が自首してきた。殺害後、家でも職場でも被害女性の「霊」が現れる恐怖体験をしたという。人を殺してしまったという罪悪感が「霊」を見せたのだろう(本書第3章「心霊事件」より)。グロテスクで理解しがたい事件が大半のなかで、犯人の人間性が垣間見える事件だ。こうした逸話は、新聞の社会面記事を読むだけでは知ることができない。
(税込1,760円)

*著者の諸岡氏は、私が昨年8月まで専属記者をしていた『週刊大衆』(双葉社)の仕事もしている知人のノンフィクションライター。

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