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<書籍紹介>『リーマンの牢獄』(齋藤栄功著。講談社)

本書は、大型詐欺「アスクレピオス事件」の主犯の1人で、詐欺罪で懲役15年の実刑判決を受け、2022年6月に約1年残して仮保釈された齋藤栄功氏(62)が今年5月に上梓したもの。
アスクレピオスとは、齋藤氏が代表を務めていた病院再生ビジネスを手掛ける企業(08年2月破産申立)。山一証券OBの齋藤氏は同証券自主廃業後、信用組合、メリルリンチ日本証券などを経て同社設立。そして、病院再生資金のために高金利を謳い実に計1500億円もの資金を集めたが、それが出来たのは「丸紅」の保証を付けたからだ。だが、その保証書は偽物だった(共犯の元丸紅課長も逮捕、服役)。
まったくのポンジスキームで、結果、400億円近くが回収不能になったが、突出して焦げ付いた被害者が約320億円のリーマン・ブラザーズで、リーマンが破たんしたのは齋藤氏逮捕(逃亡先の香港で)から約3カ月後の08年9月のことだった。
メリルリンチ時代にすでに年収1億円だった齋藤氏はカネに溺れ、愛人を3人ほど持ち、それぞれに軽井沢に別荘を買ってあげていたという。そして、リーマンを騙す際には、知り合いの元警官を丸紅の部長に仕立て上げ、丸紅本社で交渉させたという。
詐欺罪の最高刑は懲役10年なのに判決が15年(控訴せず確定)となったのは、未だ約371億円が行方不明で、その行方を公判で一切明かさなかったからだという。
そんな齋藤氏が今回本書を上梓したのは、加害者として知った“闇”を明らかにすることが自分の責務と言いたいようだ。
その最大の闇は約371億円の行方だが、本書には「黒崎」なる者が登場する。Aという実在のモデルがおり、そのAは誰もが知る巨大企業トップの親族というから、この巨大企業のコンプライアンスも問われるのではないか?
ところが、そのAは現在も六本木ヒルズ傍の超一等地に{A迎賓館}と呼ばれるプール付きの瀟洒な一軒家を個人所有し、富豪中国人たちを集めて夜な夜な怪しげな“夜総会”を開催しているという。
もちろん齋藤氏の罪は許されるものではないが、このAの実名が齋藤氏の口から語られる日こそ、齋藤氏が『リーマンの牢獄』から脱出できる日なのかも知れない。
(2000円+税)

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