本紙では今年6月3日、A社(東京都渋谷区)なるフィンテック企業の執行役員だった清水一孝氏(冒頭写真)が、「上場すれば株価は最低でも10倍、目標は30倍」などといってA社の未公開株を1株700万円などで売りつけ。しかし当初上場は22年といっていたのが25年末に延び、挙句、清水氏と連絡が取れなくなり、被害者の1人が民事提訴したことを報じた。
もっとも、被害額は数十億円とも見られ、K氏のケースはほんの氷山の一角に過ぎない。
前回記事では、その事実をA社のS社長が知らないはずがないと思っていたのだ。その後の取材で、S社長はすでに清水氏を追放。民事・刑事で訴えるだけでなく、被害者にも返金して行くことを明らかにしたので報じる。
通常なら、そんな言い分は通るわけもないと思うが、A社はしっかりした技術を持っており(ただし、そもそも上場する予定はないという)、工学系で世間知らずのS社長が、清水氏に巧みに騙された可能性も否定できないようだ。
そこで、前回以降に判明した事実などを報じる。
上場する予定の無いA社株をダシに使い、清水氏は数十億円(表面的に把握できている金額)を集めている。
それは2020年から始まり、「A社株は2022年に上場する。だから今契約しておけば、配当がうけられ、上場した時は、その時点での株価で買い戻します。出資した金額の10倍から30倍になるはず」と勧誘していた。 2年で元金が最大30倍!? 結果、多くの者がA社の将来性を信用して出資した。
出資時には金銭消費貸借契約書と金銭預り証の2通を差し入れて金銭を取得している(借用書や契約書など一切差し入れていない相手も多く存在)。
2022年になると「上場が、2026年に延びました」と清水氏から一方的に説明があり、買い戻しも実行されないまま時間は経過。ただA社は清水氏が集めた金銭を原資として増資(横左写真。現在、資本金は8億7250万円)し、増資した株の中から清水氏に相応の株を譲渡していたという。もっとも、A社に入金した金額は、清水氏が集めた金額の3分の1にも満たない金額だったようだ。
実際、清水氏はA社に金銭を入れていたが、その代償として相応のA社の株を譲り受けていた。これは株の売買であり、清水氏の詐欺行為をS社長が知らなかったのであれば不適切な行為ではなく、S社長も被害者との見方も。