アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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暴排措置(=社名公表)取消し訴訟――元社長の請求を棄却

 福岡県警に暴力団幹部との「密接交際」を認定され、その通報を受けた福岡県と福岡市のHPで社名公表され、公共工事から排除されたのは違法として、暴排措置取消しを福岡県と福岡市、それに精神的苦痛を被ったとして県に110万円の支払いを求めた元社長が原告の判決が3月13日にあった。
本紙では、この訴訟が注目されているとの記事を3月8日に報じていた
結果は、原告の請求を棄却だった。
本紙はその判決文を見たが、最初に結論を言えば、被告側の言い分を一方的に認めるひどいものだった(林史高裁判長)。
というのは、3月8日の記事でも報じたように、暴排措置の通報を受けた自治体は、その会社側には何ら反論の機会を与えず、直ちに社名公表する。
だが、そうされた原告は、異業種交流会で指定暴力団「道仁会」(本部・福岡県久留米市)の幹部と知らず飲食したことはあったが、警察での参考人聴取で、「知らなかったといえばただではすまない」と脅される一方、「知っていたと言えば今回は何もしない」旨言われ、11時間の取調べを受け、認める供述調書にサインしてしまったところ、社名公表され、銀行融資も止まり、50億円の売り上げがあった会社を潰されたと主張していた。
もし、県と市が機会を与えてくれていたら反論していたわけで、2月29日の「読売」(西部版。右下写真)もこの訴訟を取り上げ、排除措置の適法性が争われた訴訟は初と思われるとして、排除措置は意義があるとしながらも、その認定に至る調査は慎重さと正確性が求められるとの専門家の声も紹介していた。
この訴訟では、キャバクラを無許可営業していて逮捕された、異業種交流会のメンバーだった道仁会系幹部Y氏、それに警察の取調べで「異業種界メンバーは全員、正体を知っていた」旨述べていたメンバーの1人共に、異業種交流会で「Yが暴力団員であることが話題になったことはなく、原告もそのことを知らなかった」旨供述し、警察の取調べ結果と矛盾している。
ところが、判決では、警察の言い分を鵜呑みにした上、この食い違いは、排除措置を受けた「原告への負い目から、原告に有利な供述をしようとする動機があると認められる」とのまったくの推測で、この2人の供述は採用できないとしているのだ。
これだけでも驚きだが、もっと驚きなのは、前述のように、専門家も「密接交際」の認定には慎重さが求められ、今回訴訟で被告側が負ければ、運用の見直しも出て来ると言っているのに、そもそも、暴排措置は公共工事の発注を禁じるために行っているだけのことで、行政処分に当たらないので、県と市は原告にHPで社名公表前に反論の機会を与えなくてよく、本件の取消しの訴え自体が不適法としている。
また、原告は排除措置により1年間入札に参加できなくなったが、訴えはその期間後だから、本件確認の訴えの確認の利益を欠き、不適法だとも。
さらに、原告は公共工事から排除され、その際、自治体のHPで社名公表された結果、単に公共工事を受注できなくなるだけでなく、過去の排除措置でもそれは容易に判明し、すると民間の新規の取引の拒絶、既存の契約も解除されると言っているのに、それは社名公表のせいではなく、民間業者が用いる規約や契約書による暴力団関係者排除の結果に過ぎないとも。
仮に名誉を毀損され、損害を被ったのであれば、国家賠償請求で救済を求めればいいとも言っている。
こうした判決の内容を見ると、端から警察の言い分を鵜呑みに、原告を「密接交際」者と決めつけ、警察が誤って認定した場合のことなど考えもしないようだからお話にならない。
実に残念な結果と言わざるを得ない。
原告は控訴するとしている。

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