福岡県警(冒頭写真は福岡県警本部入居建物) に暴力団組員との密接交際と認定され、福岡県暴力団排除条例に基づく排除措置で、福岡県と福岡市に社名公表され、破産させられたのは不当だとして、排除措置処分取消しなどを求めた訴訟の一審判決が、福岡地裁で3月13日に予定され、注目を集めている。
この排除措置の適法性が争われる訴訟は全国で初めてと見られ、原告側が勝てば、警察はその運用の見直しを検討する必要も出て来るからだ。
というのも、最寄り自治体による社名公表は、警察が密接交際と認定すれば、自動的に県や市のホームページで公表され、その際、行政側は何のチェックもしない。要するに、社名公表される側は、破産のリスクが高いが、何ら反論などの機会を与えられていないからだ。
原告は設備工事会社「九設」(大分市。破産)の元社長(53)。
2021年11月に提訴した。
指定暴力団「道仁会」(本部・福岡県久留米市)の直系組長が福岡市中洲でキャバクラを経営していたとして風営法違反(無許可)と組織犯罪処罰法違反(犯罪収益仮装)で有罪判決を受けるが、その捜査段階で、この直系組長が10数名の会社経営者等との異業種交流会に参加していたことが判明。そのメンバーの一人が原告だったことから、福岡県警から参考人聴取を受ける。原告は警察の取調べに組長が逮捕されるまで正体を知らなかったと訴えたが、長時間に渡る脅すような言動に加え、「何もしないから」との言葉を信じ、組員と知っていたとする虚偽の自白をさせられた結果、21年4月末、排除措置され、売上高50億円、大分県の同業種ではトップクラスだった同社は破産に至ったという。(横写真=「読売」2月29日西部朝刊記事)
その詳細について、本紙では22年5月、「無許可キャバ営業の『道仁会』系幹部に有罪判決――身分隠し異業種交流会2次会使用でも売上」というタイトルで記事を報じているので、そちらもご覧いただきたい。
「私が今回、訴訟に踏み切った一番の理由は、社員が暴力団関係企業で働いていたわけではなく、普通の一般企業で働く一般市民であったことを世間に理解してもらいたかったからです。
私が世間知らずで無知な社長だったと非難されること自体は、いっこうにかまいません。しかし、もしうちがフロント企業であったなら、訴訟など起こすはずがないでしょう。この判決の勝敗に関わらず、それだけは皆さんに伝えたいと思います。
また私自身、警察と暴力団の争いの間に巻き込まれ、見せしめに使われた可能性があり、ある意味、被害者とも思っています」(原告の元社長)
そして、自分のような被害者を新たに出さないためにも、こんな一方的な警察による認定、自治体の社名公表があっていいのかとの思いからも提訴に踏み切ったという。