＜復活!!＞『田沢竜次の昭和カルチャー甦り』第117回「小野田少尉と雪男の幻」

筆者・田沢竜次（フリーライター）。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊ａｎｇｌｅ』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』（主婦と生活社）を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。

今から半世紀前の1974年2月、前年末からのオイルショックの影響で夜のネオンが自粛され、テレビの深夜番組も中止になった。
　そんな頃、あっと驚くニュースが流れた。南太平洋のルバング島で、冒険家と称する鈴木紀夫という20代の青年が、戦後29年も山中に籠っていた陸軍中野学校出身の少尉・小野田寛郎と遭遇して話をしたというのだ。その２年前の72年、グアム島に27年も籠っていた横井庄一さんが発見されて日本に戻ってきたのも衝撃だったが、「まだいたのか」と皆びっくりしたもんだよ。
　それでこの小野田さんは何故か鈴木青年とは打ち解けて、その後、当時の上官が直接呼びかけて日本に帰るわけなんだが、今あらためて検索してみると、この鈴木青年の「冒険」のメインは何と雪男を発見することだったのだ。その後、1986年にヒマラヤで遭難して30代の若さで亡くなるのだが、ヒマラヤでは本気で雪男の足跡を追っていたようで、一度は望遠鏡で見た（それも５人…じゃなかった５匹も同時にだって）という話もあった。
　まあ小野田さんと遭遇したというのも、ある意味、雪男以上の世紀の発見だったともいえそうだが、鈴木青年にとっては雪男と対面することのほうが重要だったのだろう。もしかしたら、本物の雪男に突き落とされたのかも知れない。1970年代当時は、ネッシーやツチノコなんていうのも結構本気で信じられていた時代だよ。雪男探しも荒唐無稽の話ではなかったのさ。