「ヤツは貸金業法違反で東京都から業務停止を食らったのに、その後も反復継続して高利な貸金業を続けていた」--。
“ヤツ”とは、闇金「コスモ・エージェンシー」(東京都台東区。何度も違法金利を取るなどして金融業の免許取り消しに)の松村正雄代表のことで、案の定と言うべきか、ついに昨年12月、貸金業法違反(無登録、高金利)で逮捕されたことは本紙でも既報の通り(冒頭写真=逮捕時の松村氏の報道映像より)。
松村氏は年利83%という法外な利息を取り、しかもその取立てに現役の暴力団組員を同席させていた。
冒頭のコメントは松村氏をよく知るA氏が発したものだが、こんな人物なのだから、松村氏がこれまで悪どい手口で事業展開して来たことは容易に想像できる。
そして今、そのひとつの案件が暴かれようとしている。
本紙が昨年8月に報じた不動産乗っ取り疑惑だ。
まずは、その概要を述べておく。
東京都江戸川区に住む高齢の女性・甲斐田良子氏は、クリニックを経営していた父親の死去によって土地、建物(新宿のマンション、小岩の土地・建物=横写真。以前はクリニックだった)を相続した(16年3月)。
甲斐田氏は不動産登記などの知識が乏しく、相続登記手続きはS氏に相談した。それはあくまでも、相続を登記原因とする甲斐田良子名義への所有権移転登記手続きについて。
ところがS氏は「これはいいカモ」とばかりに甲斐田氏の印鑑を始め契約者、代筆などで書類を偽造し、甲斐田氏のこの2つの相続不動産を「平成開発」(東京都台東区)なる会社名義を変え、挙句、転売までしたのだった。もちろん、当の甲斐田氏は蚊帳の外でまったく預かり知らぬことだ。
とにかく、偽造契約書に偽造印鑑、代筆での偽造などなど「偽造」のオンパレードで、極めて悪質で犯罪的な手口だ。
しかし、ここに至るまでS氏一人が動いたわけではない。事件屋のY氏や平成開発代表N氏が暗躍したのだが、その陰にいた黒幕がコスモ・エージェンシーの松村氏なのである。それは連動したS氏およびY氏、N氏の証言(後述)で、くっきりと浮き彫りにされる。
同問題の取材を続けているジャーナリストのМ氏が話す。
「Sを松村に引き合わせたのがY。Sは松村から300万円を借り、その担保として甲斐田さんの偽造された不動産書類一式を松村に預けた。またNはNで松村に平成開発の名義を貸すことで200万円引っ張った。両者とも借金するなど松村に弱みを握られ、松村の言いなりになったのでしょう」
一方、当の松村氏は、M氏の取材によれば、「すべてNやYがやったことで俺は被害者」とウソぶいているという。
実際、松村氏本人に話を聞くべく取材を申込んだが、「私はなにも悪事を働いていない。だから話すことはないので、取材に応じる必要はない」とニベもなかった。
それではS氏、Y氏、N氏が、被害者である甲斐田氏側が東京地裁に起こした処分禁止仮処分申立事件などで裁判所に提出した陳述書や証言を以下に明らかにする。(上右写真=江戸川区の物件の謄本。松村氏がやはり代表の「コスモ・デベロップメント」が登場。コスモ・エージェントでカネを貸し、返済できず取り上げた不動産を処理するための不動産会社とも)