アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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(弁護士などのプロが調査。ただし、公益性あるケースに限る)

<書籍紹介>『イリーガル探偵社 闇の事件簿』(木村浩一郎著。リーダーズノート出版)

 生物兵器を使った殺人事件を追った衝撃のノンフィクション本。
今、世界中が注目するウクライナ戦争絡みでいえば、ロシアの反体制活動家だったリトビネンコ氏は06年、ホテルで飲んだ緑茶に放射性物質ポロニウム210を盛られ内部被ばくで死去。また、同じく反体制活動家のナワリヌイ氏は空港で飲んだ紅茶に神経剤ノビチョクを盛られ暗殺されかけた。
これは生物兵器でないし、反体制活動家でない読者はそんなことは別世界の話と思われるかも知れない。
だが、新聞検索すればわが国でも保険金殺人、怨恨などからトリカブト、ヒ素、青酸カリ、リシン、パラコートなどを使用した事件があることに気づく。
もっとも、これらは体内に残るから殺人とわかり事件化しているわけだが、筆者の木村氏が追ったのは、使用しても発がん性の極めて高い遅延毒性物質であることから証拠を残さないと思われる「アフラトキシン」なるカビ毒を使った殺人の真偽と、その生物兵器を提供したマッドサイエンティストの行方。
木村氏がその完全殺人をも可能な生物兵器の存在を知ったのは、元探偵が2012年8月に自分の出版社に連絡して来たからだという。
この元探偵、復讐代行(殺人から傷害まで)をメーンに様々な非合法な仕事を請け負っていて、7億5000万円を騙し取った詐欺事件で4年ほど服役するはめに。しかし、その内の5億円以上は主犯の前出マッドサイエンティストが持って姿を消し、何らお咎めなしということで、その存在を訴えに来たのだった。
もっとも、そのマッドサイエンティストは当局さえ手玉に取ったほど。そして、アフラトキシンなどによる復讐代行は事件化していないことから闇のなかで、当局も手を付けていない。
だが、木村氏は実に9年もかけ、他の探偵仲間、依頼者、やられた相手、生物兵器の専門家、記者仲間など、可能な限り取材しまとめたのが本書だ。
依頼者のなかには、浮気夫に復讐してくれといわれ「有害バクテリア」を販売したケースも。また、取引先のリベート要求社員の顔にカビ毒を塗布。別れた妻への復讐を頼まれ、実行役に、皮膚接触で化膿して感染症を起こすという「淀川の200%増しの黴菌」入り液体を渡す。愛人の夫を襲撃してくれといわれ、合鍵で自宅に忍び込み酒類にアフラトキシンを混入したケースも。
こうした証言などを思えば、我々一般人でも仕事や恋愛トラブルから、健康を害しての入院や病死のはずが実は傷害ないし殺人事件だったケースも。
(2200円+税)

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