アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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トヨタ奥田会長の「ミサワホーム再生機構行き発言」の真相

●ミサワファンドの動きを察し、先手を打った奥田発言 本紙は、ここに来ての突如と思えるミサワホールディングス(以下、ミサワホーム)の産業再生機構(以下、再生機構)行きの流れが(ただしUFJ銀行もミサワホームも否定)、奥田経団連会長(兼トヨタ会長)の「読売新聞」を始めとする取り巻き記者への「再生機構に行ってもらった方がいい」という私的発言が契機になっていることをスッパ抜いた。 その後、さらなる詳報が判明したので、以下、お伝えしたい。 確かに、再生機構行きも検討されているのだが、正式決定前に、奥田会長がそのような発言をしたのには、必然性があったようだ。さる関係者が、証拠とされる内部資料も示しながらこう打ち分ける。 「ミサワホームを手に入れたいトヨタは、それに強固な拒絶反応を示している三澤千代治氏の影響力があるミサワファンドの設立、ハゲタカではない外資等からの融資を仰いでUFJ銀行のミサワホーム分債権を買い取り、ミサワOB、取引先による自主再建を目指す動きは、あくまでトヨタ側を牽制するためのもので、とてもではないが、具体的には進展しないと思っていた。ところが、ミサワファンドはすでに11月半ばに複数の外資系とかなり話しが煮詰まり、近々にUFJ銀行に対してデューデリジェンスを申し込むとの情報が入って来た(実際、ミサワファンドはUFJ銀行に対し、11月24日にミサワホームの1200億円の債権を時価で買い取ることを打診、さらに26日にはデューデリ申し込み書面を出している)。そして、予定ではミサワファンドは29日に3000億円ともいわれる資金調達の目処がついたとして記者会見をするとの情報も入っていたようです」 ●私企業・トヨタのために経団連会長の地位を利用 そこで、この事実を察知し、これはマズイと、奥田会長は11月25日に先手を打って問題の発言を行い、27日の「読売新聞」朝刊の“スクープ”となったというのだ。 この関係者はさらに続ける。 「ミサワホーム本体さえ、いまも自主再建を目指すといっているように、三澤氏に限らず、できればミサワ側はトヨタの介入はない方がいいというのが本音。もし、ミサワファンドが先に具体的に動き始めれば、トヨタの吸収合併は頓挫しかねない。 だが、再生機構入りの話はまだまとまっていない。かといって、トヨタが直に買い取るというと“乗っ取り”と反発を招く。そこで、奥田会長は個人的にああいう発言を記者に漏らした。表向きは奥田氏個人が、それも立ち話でフッと漏らしただけ。しかし、経団連会長の発言=公式見解と思われかねないとの計算あってのことだ。これだと、発言で反発を招こうが、再生機構入りが決まらなくても、私的に口から出た発言を、マスコミが勝手に書いただけと弁明できる。何とも巧みというか、悪辣な方法ですよ」 ●奥田発言で、契約大量キャンセル必至は計算済み 実際、この奥田会長発言で、すでにミサワホームはたいへんな状況に陥っているという。 「再生機構入り=実質、倒産のイメージから、そんな企業とは不安で契約できないと、一日に何百件もキャンセルが出ています。それで、一挙にキャッシュフロー不足に陥り、その不足分の面倒をUFJ銀行が見ている状況です。これでは、ミサワホーム自身による自主再建どころではなくなる。 トヨタ側にしてみれば、もはや反発の大きい直接の吸収より、再生機構を通すことで、大株主としての三澤氏の影響力を削ぎ、また、一旦、再生機構で面倒をみてもらえることで、いいところ取りも可能になりベター。もちろん、再生機構行き発言による資金ショートも予測した上でのことで、ミサワホーム側の苦境はむしろ歓迎でしょう」(別の事情通) これが本当なら、まさに公的な再生機構の私物化。 しかし、経団連会長という奥田氏の地位、そしてUFJ銀行、ミサワホームというやはりお荷物を減らしたい金融庁、竹中大臣との緊密さがあれば許されるという読みあっての発言だろうという。 そういう背景、力のない企業が同じ発言をすれば、批難を浴びること必至だが、「世界のトヨタ」の会長だから許されるとすれば、とんでもない話ではないか。 いまさらながらだが、UFJのお荷物企業といっても、ミサワホームは04年2月、UFJ銀行に1000億円の優先株を引き受けてもらうことで自己資本を充実させ、含み損を一掃している。ダイエーなど、他のお荷物案件とはわけが違うのだ。 ●私財をUFJ銀行に担保提供、ミサワファンドには白紙委任状を提出していた三澤千代治氏 一方、ミサワファンドにおける三澤氏の影響力を懸念する声があるのは当然だが、関係者によれば、三沢氏は間違いなく、ミサワファンドに対して白紙委任状を渡しているし、先のUFJ銀行の1000億円の優先株買い取りに際し、個人私財はすべて担保に入れているとのこと。 トップだった三澤氏のバブル(ゴルフ場投資など)へののめり込みが、今日のミサワホームの苦境を招いたのはその取りで、その責任が重大であることはいうまでもない。だが、現状、できる最大限の責任はとっており、未だ陰で影響力を駆使しようと画策、逃げ回っている西武の堤義明氏とはかなり違うというのだが……。 なお、ミサワファンドは奥田発言、再生機構入り報道に、急遽、記者会見の予定日を11月27日に前倒ししたことは既報の取りだが、さらに29日、再生機構に対し、以下のような強烈な「要望書」を提出しているという。 「万一、UFJ銀行の圧力(資金援助)に屈し、ミサワホームが再生機構入りした場合、それは再生機構の名を借り、実質的にはトヨタがミサワホームを乗っ取ることに貴機構が加担することに等しいものです。したがって、かかる申請を絶対に受理することのなきよう要望します」…

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