筆者・田沢竜次(フリーライター)。1953年東京生まれ。編集プロダクション勤務などを経て1983年からフリー。85年『月刊angle』連載を基に『東京グルメ通信・B級グルメの逆襲』(主婦と生活社)を書き下ろし、また文春文庫の「B級グルメ」シリーズでも活躍。B級グルメライターとして取材・執筆を続け今日にいたる。一方、大学の映画サークルで自主上映するほど映画にも精通。著書に「B級グルメ大当りガイド」「ニッポン映画戦後50年」など。
この秋で日活ロマンポルノ50年だという。こちとら高校3年の時、日活がこれまでの映画製作を終わりにして、ロマンポルノに切り替えると聞いて、好きだった日活ニューアクションも観られなくなるのかとガッカリしたっけ。ひいきの渡哲也の日活最後の作品となった『関東破門状』をその年の夏休みに観たんだけど、ラストシーンが何と新宿日活の映画館のなかでの斬り合いだった。
しかも当時は、斜陽の日活と大映が提携していたので、新宿では日活の作品は新宿大映で上映され、本来の新宿日活劇場は、洋画のロードショウ(名称も新宿日活オスカー)に変わっていたのだ。『関東破門状』を監督した小澤啓一のインタビュー本(『リアルの追求』ワイズ出版)のなかで、「僕たちの牙城だった新宿日活はもう売りに出ていてね。洋画なんかやっている。で、最後にドスでぶった切ってやりたい。そんな思いで作ったんだ」と語っている。そんな状況だから、もう時間の問題だったんだ。
それでポルノかよ、なんてシラけてしまい、しばらくは無視してたんだけど、翌年、地殻変動が起きたのさ。伝統ある『キネマ旬報』のベスト10に何と、ロマンポルノが2本(『一条さゆり・濡れた欲情』『白い指の戯れ』)が入って、しかも主演女優賞にこの2本に主演した伊佐山ひろ子が選ばれたのだ。おかげで古株の保守的な評論家などがベスト10の選考委員を辞退する、なんて騒ぎもあった。というわけで、低予算の成人映画の延長かと思われていた日活ロマンポルノが注目されることになったのだ。あわてて名画座にこの2本を観に行ったら、これが結構、レベルが高いってなわけで、それから数年間はもう何十本も夢中で観たってわけだよ。