未公開株詐欺というのは、本紙でも何度も取り上げたことがあるように、「近々上場する会社の株式がある。上場すると何倍かになるので確実に儲かる」といった謳い文句で、価値のない会社の株券を売り込む行為をいう。むろん、購入した株は上場するはずもなく、金を騙し取られた被害者が多数出る。
今回の詐欺疑惑は、似ているが違う。
広い人脈を持つ人物が、この未公開株販売の営業をやらされカネをセッセと会社側に入金したら、この人物が「違法行為をやったために買収金の配当も延期になった」旨言われ、すべての責任を押し付けられ、会社側はカネをせしめたという、未公開株営業の詐欺疑惑。
その疑惑が出ているのは「メタモ株式会社」(東京都千代田区。冒頭左写真は本社入居ビル。ここのレンタルオフィスを使用。佐藤由太代表取締役=同右写真)という、各種情報処理サービス事業を展開するIT関連の未公開企業がある。会社設立は2017年3月。
長崎県西海市在住のK・K氏は知人の紹介で、病院関係者I氏と知り合ったのは20年8月のこと。その翌9月にK氏はI氏から、こんな相談を受けたのが事の始まりだ。
「メタモという会社が来年(21年)に上場を予定している。その株式を売り出したいので希望者を募っている」、「上場すれば100倍近く値上がりする」というのだから“おいしい話”だ。K氏は、地元に根づいた医者の妻が虚偽の話をするわけがないと思い承諾し、すぐに活動を開始。メタモ社譲渡価格は1株1万円で、K氏は35名で計約4000万円を集めた。
その後、I氏から、「近々、米国の大手テクノロジー企業の『Palantir Technologies』(本社・コロラド州デンバー。NYSEE上場)が、メタモの子会社『Metamo Technologies』を買収する予定にある。そうなると、テクノロジー株は400倍になる」との“第2弾話”が持ちかけられ、K氏はこちらの株の販売も手掛け、約4億7000万円を集めた。