本紙では、昨年後半の「大王製紙」井川意高前会長の事件を契機に、同じく、上場企業創業者御曹司の疑惑ということで、玩具大手、東証1部「バンダイ」(現バンダイナムコホールディングス)の元社長・山科誠氏(冒頭右写真)の疑惑をいくつか取り上げて来た。
そのなかでも最も看過できない重大疑惑が、「バンダイナムコ」の大株主としての地位を保つためになされた“裏スキーム”に関するものだ。
山科氏の個人会社のなかに「サンカ」という有限会社がある。
バンダイナムコの有価証券報告書を見ると、山科氏は09年3月期までサンカを通じてバンダイナムコの10位内の大株主だったが、10年3月期には消えていることがわかる。(冒頭左写真の図参照のこと)
「山科さんが理事長に就いている『おもちゃ財団』の基本財産を少なくとも06年6月にはすでに個人流用していたことからもわかるように、かつては資産家だった山科さんですが、悪い取り巻き、そして計画性のない投資のために食い潰していき、05年6月からは虎の子のバンダイ株の処分も始めた。
だが、そうするとサンカ名義の所有割合が減る、あるいは、サンカの名前が10位内から消えてしまうので、実はクレディスイス香港を介して所有株を担保に借株し、それを売却する手法で資金を作り借金を返していたんです」(横写真=そのスキームの図)
それでも資金に窮し、結局、このスキームを終了。すなわち、遅くとも10年3月までにはこれまで所有していたバンダイナムコ株をすべて売却した結果、10年3月期にはサンカの名は大株主から消えたのだった。
しかし、それではマズイ。
そこで山科氏が次に考えたのが、単純に借株する方法だった。
もう一度、 前掲の大株主の図を見ていただきたい。
10年3月期、サンカの名前は消えたが、替わって、「バンクジュリウスベアアンドカンパニーリミテッド」なる会社が2・6%で登場している。
これが、山科氏が借株した相手だった。
でも、これでは対外的にバンクジュリウス=山科氏の株だとわからないだろうって? 確かに、その通りなのだが、山科氏はバンダイナムコ側には、「銀行側の錯誤の結果で、近くサンカの名義に戻る」と説明していた。
どういうことなのか?