本紙取材でも疑惑濃厚であること、何より、建設業界においては、元請けがその優越的な地位を利用して下請け業者へ公共工事を丸投げし、不当に低い請負代金しか払わないなどの事例は全国で多々あると思われることから、本紙でこれまでに3回に渡り取り上げている「沼田建設工業」(冒頭写真は自社ビル本社。兵庫県神戸市。沼田武夫代表)の数々の疑惑--。
その3回目では、同社に関する「違法行為を告発する会」代表でWEBサイトを立ち上げた(*ココをクリックすれば見えます)塚本茂氏が、建設業許可を出している兵庫県を被告とし、神戸地裁に、行政訴訟法第3条第6項第2号等で定める営業停止などを求め提訴したことをお伝えしたが、この行政訴訟が、審議することなく却下されていたことなどがわかったので追加報道する。
原告は、国民が公共工事のこうした違法行為を知った場合、誰でも、行政手続法第36条の3で、管轄の行政庁に職権発動を促すことができるとの規定に基づき提訴した。
ところが、神戸地裁は、同第36条の3第1項の判例よれば、この規定は「職権発動を促すにとどまり、何らかの処分をすべき義務を負うものではない」ので、前述の行政訴訟法の「法令に基づく申請」には当たらないとして、沼田建設工業の不正の有無を審議することなく却下したという。
同法第36条の3の第2項第3号では、原告が求める「当該処分又は行政指導の内容」、同第4号では「当該処分又は行政指導がされるべきであると思料する理由」などを求めているにも拘わらずだ。
こんな悪しき判例に則れば、刑事事件にでもならない限り、行政による不作為の作為により、元請け業者は違法行為をしても放置され、公共事業において我々国民の税金は無駄に消費され放題ということなのか?
原告はこの神戸地裁の判断は誤審だとして、大阪高裁に控訴。この4月30日にはその「控訴理由書」(上右写真)を提出している。
それにしても、行政手続法がありながら、違法行為を知り得た国民が行政訴訟を起こしても、ただ担当行政の「職権発動を促すにとどまり」では、行政とはそもそも事を荒立てたくなく怠惰なので、これでは当事者が告訴でもしない限り、元請けはやりたい放題。しかしながら、下請けは弱い立場で文句をいえないからこういう問題が起きるわけで、元請けを告訴などまずあり得ないではないか。
そういうわけで、大阪高裁がどう判断するか要注目だ。
また、この神戸地裁の棄却に気を良くしたのか、4月30日、沼田建設工業と沼田武夫社長個人が、原告を相手取り、前述の「違法行為を告発する会」WEBサイトの閉鎖を求める仮処分申し立てを神戸地裁に行った(横写真)ことも判明した。
これに対し、原告は「正義は自分にある」として徹底して争う姿勢を示している。
昨今の安倍政権下では、「忖度」の言葉が流行語になっているように、「長い物には巻かれよ」の負け犬精神がますます国民に蔓延。民主主義はさらに形骸化し、格差社会は拡大する一方だ。
こうしたなか、こちらの仮処分申し立て事件の行方も要注目だろう。