アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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「清水建設」コロナ感染死社員に関して伏せられていること

最大手ゼネコン「清水建設」(1803。東証1部。東京都中央区。井上和幸社長=下左写真)が、都内の同一作業所勤務者3名が新型コロナウイルスに感染、内1名が亡くなったとIRした(冒頭写真)のは4月13日のことだった。
これを重く見た清水建設は、同IRで、政府が緊急事態宣言を出した対象地域に所在する作業所を宣言が終了する(現状5月6日)まで原則、閉所すると発表。4月17日には、政府が追加で緊急事態宣言を出した6道府県についても閉所するとIRした。
作業を止める現場は最初の緊急事態宣言対象地域だけでも約500か所にもなる。当然、工事が遅れるわけで、その補償だけでも大変だ。そして現場は密閉空間でないところも多いから、ここまで徹底して閉所する建設会社は少数派だ。
こうした対応を見れば、清水建設は現場の作業員のコロナ感染につき真摯に対応しているようにも思えるが、果たして本当にそうなのか?
というのは、この死亡した社員Iさん(享年56)に関する情報が本紙には複数の筋から寄せられたが、それを検討すると杜撰、冷酷とも思える対応があり、関係者の間からは「これでは野垂れ死にだ!」との怒り、不審の声まで出ているからだ。
それは冒頭で紹介した4月13日のIRにも見て取れる。
同一作業所で3名が感染し、1名が死亡したのだ。現場におけるクラスターを疑って当然で、ならばそのことをタイトルでも謳い、公知することが最優先されるべきではないか。ところが、タイトルは清水建設の新型コロナへの対応についてと漠然としたもので、しかもいかにキチンと取り組んでいるかを謳った内容。
感染、死亡の内容は本文で3分の1割かれているに過ぎず、これではタイトルだけ見て本文は見ない関係者もいたのではないか。
しかも、この3分の1の記述にしても、最低限どころか、不正確とさえ思える記述になっている。
死亡したIさんは、「自宅待機をしていたところ、容態が急変し、亡くなりました」と記されている。だが、この「自宅」とは清水建設の社員寮。Iさんは福岡県から単身赴任していたからだ。そして、会社の方が携帯で連絡しても応答がないことから寮に駆けつけたところ個室で亡くなっていた。「孤独死」していたのが真相だったのだ。(横右写真=清水建設本社ビル)
ある社員は、こう明かす。
「まず冷酷と思ったのは、この社員寮での対応。社員食堂付きだが、4月3日に自宅(寮)待機を命じられたIさんは、他の社員への感染を心配して食堂にはいかず、すでに体調不良になっていたのに、自身で弁当を買いに外出している。他の社員が買って来て上げ、Iさんの個室の前に置いて上げるとか対応の仕方はなかったのか?」
要するに、会社側は感染の可能性を伏せていた模様(Iさんが感染していたことが判明したのは死後2日目の4月13日)。そして、フォローもまったくしなかったようなのだ。
さらに不信感を抱かざるを得ないのは、3人が同一作業所で発熱(実際には最大8名とも)症状が出たとなれば、労災の可能性もあるクラスター発生を疑い、会社が主導的にPCR検査を受けさせて当然ではないか?
ところが、実際には個人で検査を受けるように指示されている。

「Iさんは4月6日に保健所に連絡するも電話が繋がらず、結局、連絡がつき検査を受けたのは4月9日。この時、Iさんはすでに9度近い高熱が出ていたので、肺炎になっていたはず。にも拘わらず、個人でというから、Iさんは自転車で病院に行っているんです」(事情通)
Iさんが出向いたのは、用賀の「関東中央病院」(横写真)。
寒空の下、約40分、病院の外に設置された特設テント前で待たされ、問診もなく、5分ほどのPCR検査だけで帰らされた。
そして、翌々日に寮内で「孤独死」していたわけだ。
「もし、会社のフォローがあれば、その場で胸部レントゲン検査を受ければ肺炎とわかり、即、入院。ならば、助かっていた可能性もあるのではないか? 確かに、院内感染を恐れ、会社がフォローしても病院が拒否したかも知れない。だが、会社が最初からフォローしてればもっと早く検査を受けられ、助かる手立てはあったのではないか。
同じ寮にたくさんの社員がいながら(約30室ほどある模様)、誰もIさんの状況を知らず、個室で一人死んだんです。これでは、野垂れ死に同然ではないですか!?」(知人)
実際、社内ではIRされるまで緘口令が敷かれ、IR後も氏名は伏せられ、それでも噂を聞いた仲間5名ほどが、4月15日に葬儀場を訪ねたそうだ。
Iさんは明治大学卒で、同大ではラグビー部に所属。身長175㌢、体重は約100㌔あった。
「4月3日の段階で37度台の発熱、セキというコロナの典型的症状が出て、8日までは36度台と上がり下がりの繰り返し。そして8日に9度近い高熱が出てその3日後に亡くなった。高齢者、持病持ちの方の死亡リスクがいわれますが、IさんのようにBMIの数値が高い=肥満の方もやはり死亡率が高いという識者もいます。要注意です」(同)
Iさんは、就職後も熱心に後輩の指導に当たっていた。
葬儀場に駆けつけたのは清水建設のラグビー仲間。
「寮にしたって、3月3日にクラスター発生の可能性が出た段階で閉鎖しないとおかしいのでは? ところが、実際に閉鎖したのはIさんの陽性が判明した4月13日と聞いています。Iさんは食堂を使用しなかったとはいえ、他の共用部分での感染、4月3日以前の無症状の時期にウイルスがまき散らされている可能性もあるでしょう」(同)
本紙は4月18日午後、その寮を訪ねて見た(横写真2点)。
囲いがされ見張りが付いていることを予想していた(単に人の出入り禁止だけではなく、この寮で暮らす人は外出禁止。Iさんの件で出入りしていた社員も同様との情報)が、張り紙一つなかった。こんなことで、本当に大丈夫なのだろうか?
なお、遺族に対しては清水建設は5割ともいわれる割増退職金、お見舞金などを提示し、マスコミ対策は万全にしたつもりだろうから、本紙のこの記事には驚くのではないか。
最後に、4月13日のIRには、3人の感染の関係性が伏せられているが、実はまず別の者の陽性が判明。それで調査したらIさんともう1人が後に陽性と判明したとの未確認情報もある。
また当初、遺族への対応は下っ端の社員が事務的に対応するだけでひどかったとか、実は当初はもっと死去のIRは先延ばしするつもりだったがある事情から急いだ、またIRの文面を巡って遺族側と駆け引きがあったなどという同じく未確認情報も。
こうした点につき、現在、清水建設宛てに質問状を作成中だ。
事が事であり、かなりの真相が明らかになって来ている以上、清水建設は「個人情報につきお答えできません」ではなく、事実関係の有無についてはキチンと回答してもらいたいものだ。
その結果は、追って報告する。

 

 

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