「郷鉄工所」(岐阜県垂井町)といえば、本紙が徹底追及したように、東証2部に上場していたが、松尾隆氏を筆頭とする事件屋が厳しい資金繰りを助けるといって介入、実際は食い潰し、昨年9月上場廃止、翌10月に自己破産申請するに至ったのは周知の事実。
その介入渦中の昨年3月、本社工場不動産が17億円で、郷鉄工に資金を貸し付けていた者の会社に所有権移転。本紙はこれを問題視し報じたところ、記事削除処分申立され、昨年12月、仮に記事を削除せよとの決定が。
ところが、今年4月27日に開催された郷鉄工所債権者集会において破産管財人の小森正悟弁護士は、昨年3月期の債務超過を防ぐために考えられたスキームのなかで実行された売買の真偽に疑問があると発言。もうそうなら、破産法に基く否認権を行使してかかる財産を破産財団に復帰させ、換価して財団に組み入れることも考えられるとして、実際、すでに一部相手に否認権を行使できるか確認したい旨の申し入れを行っていると明かしていたことがわかった。
それだけでは、具体的にその相手は誰か不明だが、本紙が入手した同日付の債権者に配られた「財産状況等報告書」には、その1つが本社工場不動産を買収した件であることが明記されていた。
これは「通謀虚偽表示」というもので、売主・買主双方が売買の契約書の内容で売買する意思がないのに、双方が意思を通じて売買契約書の内容で売買することとしたケースを意味する。
そして、その場合は原則としてこの売買は無効(民法第94条第1項)となる。つまり、本社工場土地の所有権は郷鉄工側に戻るので、高値で転売できれば、債権者にそれなりの支払いが出来ることになる。
要するに、本紙は仮処分で負けたものの、その裁判所の決定は怪しくなるわけで、本紙は注目、そこで裏づけ取材してみた。
すると、そうはいっても、当然ながらまだ実際に売買無効になるとは決まってもいないのに、すでにそれを前提に、破産管財人に対し、ある企業が買い付け証明書を出すなど不可解な事実が浮上して来た。
不可解というのは当然だろう。
任意売却より競売方式の方が高値で売れるだろう。しかも、その買い付け証明を出しているとされる建設会社は、前出・松尾氏の仲介で融資をしていたところ。これでは、公平性の上でも疑問が出て来るというものだ。