前もって断っておくが、これは証券取引等監視委員会(SESC)にもっとがんばってもらいたいための奮起を期待しての記事だ。
今月の「ZAITEN」(11月号)「捜査当局こぼれ話」のなかで、SESCが金融庁に課徴金納付命令を出すように勧告したものの、その処分取り消し訴訟で負けるケースが相次いでいるとの記事を報じ、調査能力の低下もあるのではとの元SESC担当記者のコメントも載せている。
だが、疑惑濃厚でも、調査能力以前に、いざ証明となると難しい部分があるのも事実。もう時効だろうから、そんな一例を取上げよう。
実際にあったことだが、W(仮名)は相場操縦疑惑でSESCより勧告を受けた。しかし、Wはそれを不服として裁判に。もう10年近く前のことだが、筆者はW側近に頼まれ、対象銘柄の日々のデータを集めて渡した。数カ月分のデータなので、当然Wが売買していない日でも株価が急に動く日もある。それは実際には借名口座によるものだが、当局はそこまで調べられなかったようだ。
また、インサイダー疑惑の場合は、その銘柄を取り上げた証券各社のレポートを集めること。運よくレポートがあれば、「このレポートを見て買った」で済む。
これも時効なので暴露するが、上場廃止になった塩見ホールディングスの株価が増資前に動いたケース。インサイダーの場合、後からSESCの調査が入っても「言い訳」できる材料を用意しておけばいいのだ。もちろん当該企業の社員とのスマホ等での連絡はダメだ。面倒だが、公衆電話を使うことだ。
そのようなあの手、この手でうまくすり抜けている連中がいるのも事実で、この直近でも相場操縦もあり得るのでは、とも思える動きの株がある。