アクセスジャーナル記者 山岡俊介の取材メモ

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国家賠償請求訴訟ーー警視庁囮捜査によるナイジェリア人暴行疑惑

「歌舞伎町の外国人」と聞けば、ある種のうさんくささを感じる人もいるだろう。最近ではアフリカ系外国人による「ぼったくりバー」事件も報道されている。しかし、だからといって歌舞伎町にいる外国人にはどんな捜査をしてもよい、ということにはならないのは、法治国家ならば当然だ。  今、あるナイジェリア人男性(横写真地図=赤い部分がナジェリア)が、「新宿署の警察官に暴行を受けた」として国家賠償裁判を起こしている。2007年11月20日、その裁判の第三回控訴審公判が東京高裁で開かれたので、関係者に話を聞いてみた。 ●事件の経緯  2003年12月9日、夜7時台の新宿・歌舞伎町(横写真)のとある路上。ナイジェリア国籍のバレンタインさんが、アルバイトでナイトクラブのチラシを撒く仕事をしていた。ただ、まだ営業時間前だったので、同僚と立ち話をしていたという(以下の話は、バレンタインさんの妻の日本人女性の証言)。するとバレンタインさんに男性が近づて「店はどこ?」「ここから近いの?」と聞いてきた。実はこの男性は、客を装ったオトリ捜査官だったのだが、バレンタインさんはまだ開店前なので店主に電話で確認してから、「客」を店に誘導しようとした。  ところが、「客」の正体を知っている店の同僚が、バレンタインさんが「客」を連れているのを見て、とっさに「逃げろ」と叫んだ。バレンタインさんは「客」をヤクザと思い、慌てて逃げようとした。が、張り込んでいた別の警察官がおり、路上に引き倒された。そして風営法違反容疑で逮捕、手錠をかけられた。  問題はこのときである。頭を強打して意識が朦朧としていたバレンタインさんに対し、新宿署のT警部補が右膝周辺を何度も踏みつけ、意識が一気に覚醒するほどの激痛がしたそうだ(後の診断では、膝下を屈伸させる骨である、頸骨の粉砕骨折に)。ある目撃者の証言では、この警部補は「黒人は怖いからな」と言いながら、右膝周辺をめいっぱい踏みつけていたという(写真=暴行があったとされる現場。「The Japan Times」07年8月14日記事より)。  しかも新宿署に10日間、身柄拘束されていた時、必要だった緊急手術を受けられず、東京警察病院でギプスをしたまま取り調べられたのだ。  バレンタインさんは結局、不起訴になったが、このときの暴行とずさんな処置のため、身体障害を負うことになり、障害者手帳(5級)の保持者になってしまった。今後は普通に走ることも難しいという。  2005年8月、バレンタインさんは東京都に対し、損害賠償と医療費を請求する国倍訴訟にふみきった。夜の歌舞伎町での「捕り物」であるから、多くの人が目撃していただろう。しかし、証言に立ったのはアフリカ出身の外国人のみ。T警部補は暴行の事実を認めず、「逃走中に自分から看板に衝突し骨折した」と証言(仲間の警察官もT警部補の証人に)。  07年3月29日、敗訴。東京地裁民事44部は、その理由として「(目撃者はバレンタインさんの)友人であり、歌舞伎町の黒人コミュニティーの仲間であったこと等に照らすと、証人フランシスの供述は、目撃証言として客観性を有するものといえず、そのまま信用することは到底できない」としている。要するに警察の証言は信用できるが、アフリカ系外国人の証言は信用できない、という判決だ。バレンタインさんはこれを不服として、同年5月に控訴して現在に至っている。 ●浮かび上がる不自然な点  警察の証言は本当に信用できるのか。いくつか不自然な点がある。  身柄拘束されたとき、バレンタインさんは東京警察病院で診療を受けたが、そのカルテを弁護士が開示請求したところ、「紛失したから開示できない」と拒否されたというのだ。同じ警察同士、もみ消したのではないかと疑われても仕方あるまい。カルテを紛失したのがもし事実なら、個人情報保護の点からしてあまりにずさんな管理といえる。  また、事件直後に弁護士が現場検証したときは現場にあった監視カメラが、いつの間にか撤去されていたという。警察に問い合わせても「ずっと前からなかった」というのだ。  そもそも、「逃走中に自ら看板に衝突し骨折した」と警部補は証言しているが、常識的に考えてあまりにも不自然ではないだろうか。  こうした疑問もあるからか、控訴審には50人以上の傍聴人がつめかけ、席が足らず、異例にも補助席が出された。人権団体のバックアップもあり、「バレンタイン裁判支援会」が結成されている。  外国人、とくに在留資格のない人は「不法入国者」という身分から、トラブルに陥っても声を上げにくい立場にある。バレンタインさんの妻は、「こういう立場の外国人は多いと思う。そういう人たちのためにも、この裁判に勝ちたい」と語った。  支援会は、事件当日の目撃証言を引き続き求めている。  次回公判は2008年2月12日、13:30から、東京高裁808法廷で開かれる。…

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