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<書籍紹介>『天皇の「代替わり儀式」と憲法』(中島三千男著)

 4月30日の前天皇退位、5月1日の新天皇就任のなか、天皇の「代替わり儀式」が続いているが、各国から元首、首相らが参加する「即位礼」は10月22日、「大嘗祭」は11月14日で、これからが最大の盛り上がりを見せる。
紹介が遅くなったが、本書は7月10日に「日本機関紙出版センター」(大阪市福島区)から出た。
著者の中島三千男氏は、日本近代思想史、特に国家神道、天皇の代替わり、海外神社の研究に取り組んでおり、神奈川大学名誉教授(神奈川大学元学長)。ちなみに、本紙・山岡はこの中島氏の日本史ゼミの1期生。
本紙では新元号が今年5月1日からに決まった17年12月1日、「安倍首相が進める、『国民主権』無視の改元の危うさ」なるタイトル記事を報じているが、その時、インタビューに登場してもらった天皇制の研究者(大学教授)とは、中島氏のことだ。
その中島氏の本が出たので紹介した。こんな遅れた時期に出たのは、17年あたりから「代替わり」関係の原稿依頼が相次いだが、他のテーマの原稿を抱え、短文、インタビュー、講演を除いて全て断っていたところ、その講演を聞いた、同出版社編集者より依頼があり、講演内容を完全原稿に近いかたちで出していただけるならの条件で折り合っからだという。
御用学者も多いなか、中島氏の主張は、単にどんな「代替わり儀式」が行われるかというお宅研究でもなく、主権在民の現憲法と照らし合わせ、自民党、安倍首相が進める、明治時代からの国家神道、それに基づいた「天皇制正統神話」の理念により近づけ、日本を「戦争をする国」にすべく天皇を政治利用するような行為はダメというもの。
例えば「大嘗祭」。政府は宗教的性格が強いということで戦前のように国事行為にこそしなかったが、わが国の安寧と五穀豊穣を祈念するものとして公的行事としては認めた。だが、この儀式のそもそもの目的は天照大神が座す神座と対面して天皇が神の神性を身に付ける神人共食の儀式で、戦前の国定教科書には、これにより「わが大日本が神の国であることを明らかにするもの」と記されていたという。
 したがって、戦前の形をそのまま踏襲したこの儀式は、現憲法の象徴天皇制に反し、やるなら私的にやるべきだが、前述のようにねじ曲げた解釈で公的行事と認め、その儀式に新設する大嘗宮は儀式終了後すぐ解体されるが、平成の代替わり時はそのため10数億円が税金で賄われたという(18年、当時の秋篠宮、高松宮も建設費は無駄との発言)
皇室典範に規定があるのは即位の礼だけだが、退位の儀は、今回も公的どころか国事行為になったのはご存知の通り。(横写真=「即位礼正殿の儀」で、高御座の上の天皇の前で万歳三唱する海部俊樹首相。1990年11月)
中島氏はこうした背景には、自民党、安倍内閣を支持する日本会議、神道政治連盟に繋がる勢力の動き、さらには安倍首相の政治思想とは対立する「平和憲法」の象徴としての現天皇に親近感を持つ国民のなかにも、実は韓国や中国が政治的、経済的に力をつけるなか、もう一度大国としての地位を取り戻したい願望が、世界にない天皇制への親和性を無条件に強めていないかと懸念する。
最後に、安倍首相の自衛隊を憲法に位置づける改憲が実現すれば、自衛隊の観閲式などに天皇・皇后が臨席。さらに、ゆくゆくは「お言葉」を述べるなどの事態が始まるのではと危惧しているという。
(900円+税)

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